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白河桃子 すごい働き方革命

「24時間営業」の次へ現場行脚 ファミマ・沢田社長 ファミリーマート 沢田貴司社長(下)

2019/5/15

白河 先ほど、「地域『異常』密着型コンビニ」を目指すとおっしゃっていましたが、ということは、現場にかなり権限委譲していく方針でしょうか?

沢田 委譲していきたいですね。これまで全国津々浦々、650店舗くらいに実際に足を運んで感じたのが、売り上げが好調なだけでなく店内の雰囲気も素晴らしいお店に共通しているのは加盟店さんが自ら考え、自ら行動しているということです。お客様のためになることを真剣に考えて、独自のアイデアでいろんなことをやっている。自分で考えて行動するから純粋に楽しんで商売をされているんですよ。これが本当に理想の形だと思います。私たち本部の役割は、環境を整えて提供するだけであって、上からあれこれ言って管理する時代はとっくに過ぎ去っていますね。

白河 社長がそこまで言い切るのは、すごく斬新だと思います。

沢田 斬新ではありませんよ。私自身もずっと好きなことをやってきて、今に至るわけですから。やっぱりいい仕事をするには、好きなことをやるしかない。これは自分の経験上、自信を持って言えることです。

もちろん、商品やシステムといったチェーンとして統一すべき型はあります。ただ、こと販売に関しては、いかに地域に愛されるかで勝敗は決まります。だから、それぞれの地域で加盟店の皆さんと共に働く現場の社員に託すしかない。その一環として、今年度は地域の特色を打ち出す売場づくりや、地域に特化した販促を推進することを目的に、東北と九州の2カ所でリージョン制を導入し、思い切った権限委譲をしていきます。

白河 それは楽しみですね。「コンビニは全国どこに行っても同じ」という標準化から脱却するということでしょうか。

沢田 脱却という感覚はあまりなくて、加盟店と本部、加盟店と地域の距離を今よりもずっと近づけて、圧倒的な信頼関係をつくっていきたいという思いです。そして、「同じコンビニをやるなら、ファミマでやりたいよね」と加盟店のオーナーさんにも思っていただけるような魅力的な職場にしていきたいです。

■「自分で考え行動する仕事の醍醐味」を味わってほしい

白河 常に新しい取り組みを始められるので目が離せないです。

沢田 今の時代は、過去に決めたことを守り続けていることに慢心するほうがリスクではないでしょうか。いろんな仮説を立てながらトライアル・アンド・エラーを繰り返すほうが正しいのではないかと考えています。

白河 店舗で働くスタッフの皆さんはもちろん、本部で働く社員の皆さんのモチベーションも高めていくために何を大事にしていきたいですか?

沢田 やはり、「自分で考え行動する仕事の醍醐味」を味わってもらえる環境づくりです。私自身も自分のキャリアを振り返ると、いろんな失敗もありましたが、自ら考え行動した仕事が一番やりがいがあり、結果も出ました。

白河 「トップが決めたことにお任せ」ではなく、皆が自分自身で考えて行動する組織を目指すということですね。

沢田 はい。これからはそういう組織こそが、成長していけるはずだと信じています。

白河 本日はありがとうございました。

あとがき:2年前にファミマの全女性社員が一堂に会した女性活躍アワードで基調講演をさせていただきました。アワードのプレゼンターはなんと香取慎吾さん。サプライズで会場は大騒ぎ。こんなに盛り上がった企業イベントは見たことがありません。「みんなが一番喜ぶことはなんだろう」と考えた社長のサプライズだったそうです。現場の働きやすさを重視し、現場の人中心のシステムを整える。ゼイネップ・トン氏(マサチューセッツ工科大学スローンスクール・オブ・マネジメント 非常勤准教授)が提言した「よい職場」戦略と呼ばれるもので、米ウォルマートなどで実践されています。パートアルバイトが多い労働集約的な現場で生産性向上、定着率の向上などに通じる働き方改革です。沢田社長のコンビニ改革は「良い職場戦略」に通じるものでした。24時間営業が基本のコンビニのビジネスモデルの変革期、常に現場を向いて「当たり前」を疑う沢田社長の次の一手が楽しみです。

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 宮本恵理子)

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