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立川談笑、らくご「虎の穴」

アイデアノートの逆説 無用の閃きがくれる豊かな時間 立川吉笑

2019/4/28

平成最後の「立川談笑一門会」で高座をつとめる吉笑さん(2019年4月19日、東京都武蔵野市)

落語家という仕事は「自分の落語」を磨き続けることが活動の全てとも言える。一席の落語を長い時間をかけて磨き上げていく、その年輪が芸の説得力につながり、その鍛錬の連続が名人へとつながっていくのは確かだ。だけど僕には、それと同じくらい興味をもっていることがある。これまで誰もやってこなかった色々なことを形にしていくことだ。

だからそういう活動には自覚的に取り組んできた。この春に始めた『クイックジャパン』という雑誌での連載も、これまでの落語家になかった僕の新しい動き方、そのトライ&エラーを毎回書いてほしいとの依頼を受けたものだ。もしかしたら僕の活動ぶりがオファーの理由のひとつだったのかもしれない。10年ほど前、熱心に読んでいた雑誌だったから、声をかけていただけたことも、とてもうれしかった。

雑誌に連載できるほど「新しい動き方」を自分はやれているのか、やっていける見通しはあるのか。そこで改めて自分と向き合ってみたが、思っていた以上にやりたいことがたくさんあって、どうやら今年1年は続けられるくらいの企画案は用意できることに気づいた。それは僕がアイデアを書きとめてきたノートの大切さを再認識することにもつながった。

僕は喫茶店で考えごとをするのが好きだ。色々な締め切り案件の谷間の時期に、あてもなくノートを開いて、どういうことをやれたら楽しそうか妄想しながら書きなぐっていく。思いつくことと実際に形にすることには雲泥の差があって、基本的には思い描いたことのごく一部しか実行することはできない。

だからアイデアの種を残しておくノートを開いたら、まだ形にできていない企画案がたくさん出てくる。たまに見返すと「今ならできる」と思える企画案をみつけることもあって、そのときは実行に向けて動く。思いついてメモはしておくけど、落語から離れすぎていて、実行の優先順位が低いアイデアというのもある。今回はそんな企画の種について書いてみたい。

スマホから「街角コメンタリー」

僕は「イングレス」とか「ポケモンGO」のようなスマホゲームが好きだ。実際にある建物や場所とゲーム世界とがリンクしているもの。アプリを通すことで、普段何気なく歩いている道が違って見え、グッとくる。そこで思いついたのが、美術館の音声ガイドみたいに、街並みについて語る声がスマホを通して聞こえてきたら楽しいなぁということ。たまに前座のころ住んでいた高円寺に行くと、建物一つ一つから当時の記憶が蘇(よみがえ)ってくる。北口のマクドナルド、よく夜中にネタを覚えに行ったなぁ。ロータリーのベンチ、ゾマホンさんがママチャリのチェーンを直しているところを見たなぁ。南口の時計の下の植え込み、酔っ払って転んで腕を擦りむいたなぁ。早稲田通り沿いのコインランドリー、夜中によく洗濯したなぁ、とか。

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