改元と暮らしのトラブル 詐欺や遺言…注意は怠りなく西暦表示NGのケースも

法律の専門家である公証人が作成する「公正証書遺言」と違い、「自筆証書遺言」は本人が作成する。自筆証書遺言の場合、相続時には家庭裁判所が相続人を集めて遺言の状態を確定する。この「検認」の件数は17年に1万7千件を超えた(グラフB)。

注意したいのは過去に書いた遺言を何らかの理由で修正する場合だ。署名・なつ印などをすれば上書きも有効だが、元の記載が平成だからといって、つい「平成32年」などと書くのは避けたい。

日付を記載するのは、遺言者がその能力を当日有していたことを確定させるのが目的の一つ。改元後かなりの時間が経過したにもかかわらず旧元号を書いていると、「真実の作成日や遺言者の遺言能力について疑義を生じさせかねない」(法務省)。

相続人同士のトラブルに発展する可能性もある。日付を元号表記するなら、正しい元号を使おう。

公的な文書には元号と西暦が交じっている。運転免許証は今年春以降、有効期限の欄に西暦と元号が併記されている。マイナンバーカードは有効期限は西暦表示だが、生年月日は元号表示。すべて西暦表示にすればミスが起こりづらくなる気もするが、そう簡単ではない。

民事裁判に詳しい志賀剛一弁護士は「離婚調停の和解調書などは元号での表記が望ましい」と話す。「相手方の給与を差し押さえる強制執行の際、西暦だと裁判所が調書の法的効力を認めない可能性もある」。司法の世界では元号が根強く残っているようだ。

生命保険や火災保険など、一般に保険期間が決まっている商品についても確認しておこう。例えば、今年3月に保険期間10年の保険に加入した人の保険証券には、満期日が「平成41年」と書かれているだろう。実際には存在しない和暦だが、書類の修正や再発行は原則として必要ない。

改元に先立ち、金融庁は生命保険協会などに「顧客の生活に支障が出ないようにすること」を求めた。三井住友海上火災保険は「4月30日までに発行する保険証券や書類などは満期日も含めて平成で表記するが、保険契約および補償内容の有効性への影響はない」とする。

加入者が表記を令和に修正したいなら、二重線をして書き加えるだけで、訂正印は必要ない。希望すれば令和表記の保険証券の再発行もしてくれる。大半の保険会社は、既存の保険証券や書類について、修正などの負担を加入者に強いることはなさそうだ。

(後藤直久、堀大介、岡田真知子)

[日本経済新聞朝刊2019年4月27日付を再構成]

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