カーニバルに秘めた民衆の抗議 ブラジルに残る文化

日経ナショナル ジオグラフィック社

高台から見下ろしたサルバドールの町。1985年に、町の歴史地区はユネスコ世界遺産に登録されたが、観光客向けに指定された狭い区域の外では、老朽化した保護建造物も数多い(PHOTOGRAPH BY STEPHANIE FODEN)

サルバドールのカーニバルには、毎年100万人近くが訪れる。そこで最も耳にするビートは、時に100人もの奏者によって演奏されるサンバレゲエ(サンバヘギ)だ。ブラジルを代表するサンバと、ジャマイカを代表するレゲエは、どちらも元々抗議の歌を陽気なビートに乗せた音楽だ。そのリズムが、生で飾り気のない、喜びの入り混じった怒りをかきたて、新たなジャンルへと発展した。

どんちゃん騒ぎではない

バイーアのカーニバルが、単なるどんちゃん騒ぎだと思って行くと、驚かされるだろう。そこは、ブラジル流の政治的主張を行う場なのだ。毎年カーニバルで、音楽やダンス、ファッションを通して黒人文化の普及に努める集団を「ブロコ・アフロ」と呼ぶ。パレードで彼らはいつも、アフリカのルーツを祝いながら複雑な政治問題を訴える。

奴隷制の時代、強制労働させる目的で約170万人ものアフリカの人々がバイーアへと送られた。その多くは、現代の西アフリカにあるベナン共和国の出身だった。人々はその歴史を忘れるべきではないと、ブロコ・アフロは考えている。

ペロウリーニョにある聖フランシスコ教会を訪れる旅行者たち。1700年代半ばに建設が始まった教会の内装には、推定1トンの黄金が使われている(PHOTOGRAPH BY STEPHANIE FODEN)

そんなブロコ・アフロの副代表を務める活動家のルマ・ナッシメントさんは、人々の集団と政治の関係をよく理解している。「カーニバルには、明らかな民族的分断があります。高額な料金を払って見物席からパレードを見物するのはほとんどが白人です。そして、彼らにサービスを提供しているのはほとんどが有色人種です」

人種差別や極右キリスト教福音派の台頭への不満を表すため、ナッシメントさんたちは、カーニバルで政治的スローガンを口々に叫んでいた。

次ページでも、ステファニー・フォデン氏の写真でサルバドールの街と人々を紹介する。

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