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内戦から奇跡の復活 アフリカ、ゴロンゴーザの自然

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/5/5

公園の外の状況も深刻だった。現在、再生プロジェクトで「緩衝帯」と呼ばれている5180平方キロの地域には、かつて約10万人の人々が暮らしていた。住民のほとんどはトウモロコシなどを栽培してやっと生き延びていた状態で、教育も医療も十分に受けられなかった。

繰り返される破壊と喪失に収束の兆しが見え始めたのは2004年。当時のモザンビーク大統領ジョアキン・シサノが米国人実業家グレゴリー・カーに招かれ、米ハーバード大学で講演したときのことだ。

「シサノ大統領は国立公園に愛着をもっていました」とカーは言う。カーは2004年に初めてモザンビークを訪問し、そこで大統領から直々にゴロンゴーザ再建を要請された。

3年後、カーは政府と長期契約を結んだ。彼は資金の提供や運営の才覚を発揮するだけでなく、ゴロンゴーザを「人権を守る公園」にする構想を正しく理解していた。それは、自然の風景や水源、あらゆる生物の多様性を守るのに加え、周辺に暮らす人々にも、医療や教育の機会、農業技術や経済の向上といった具体的な恩恵をもたらすことだ。

あるとき、公園の森林管理責任者であるモザンビーク人のペドロ・ムアグラが、会議で一つの提案をした。木々が伐採された山腹でコーヒーを栽培したらどうだろう? コーヒーは木陰で育ちやすい。原生種の木を植えて木陰をつくれば、森林の再生にも収入にもつながる。

衝突が断続的に続く交戦地帯で、コーヒー栽培と森林再生に挑戦するのは勇気がいる。それでも地元の農家はこの試みを受け入れているようだ。再び戦闘が勃発した2014年にも、夜間にコーヒーの若木に水をやる女性たちの姿があったという。

自然には回復力が備わっている。それでも傷ついた自然を復活へ導くには、山腹に木を植え、密猟を監視するだけでは足りない。2018年には、戦乱で姿を消していた在来の捕食動物、リカオンの群れを大きな囲いの中で順化させた後、公園内に放した。

また、保護していたシマウマの小さな群れも、慎重に様子を見極めながら野生に返している。そうした獲物を狙うヒョウの姿が確認されたのも良い兆しだ。

(文 デビッド・クアメン、写真 チャーリー・ハミルトン・ジェームズ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

ナショナル ジオグラフィック日本版 2019年5月号[雑誌]

著者 : 日経ナショナルジオグラフィック
出版 : 日経ナショナルジオグラフィック社
価格 : 1,110円 (税込み)


[参考]ナショナル ジオグラフィック日本版5月号は、没後500年となる天才レオナルド・ダ・ヴィンチを特集。ダ・ヴィンチの着想は今なお私たちに影響を与えています。このほか海洋プラスチック汚染に迫る「プラスチックを食べる海の魚たち」、人と自然の共生を実現して復活する「輝きを取り戻すモザンビークの自然」(今回、ダイジェストで紹介)、神秘的な地下空間を探検する「ボルネオの巨大洞窟」などを掲載しています。

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