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内戦から奇跡の復活 アフリカ、ゴロンゴーザの自然

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/5/5

ナショナルジオグラフィック日本版

ゴロンゴーザのリカオンの群れ。リカオンは内戦中に公園から完全に姿を消した。しかし、彼らの獲物となる動物の個体数が増えたため、2018年に南アフリカから14頭を再導入したところ、生態系のバランスが改善された(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES)

内戦で壊滅的な被害を受けたアフリカ南東部のモザンビーク。この国の中部にあるのがゴロンゴーザ国立公園だ。ナショナル ジオグラフィック5月号では、現在進行している再生プロジェクトを通じて、自然と人間の新たな共存についてレポートしている。

◇  ◇  ◇

ゴロンゴーザ国立公園には、現在650頭を超すゾウが暮らしている。かつて公園内にいたゾウは、1977年から92年まで続いたモザンビークの内戦中に、ほとんどが殺されてしまった。武器や弾薬を買う資金源として象牙や肉が狙われたのだ。だが、停戦後は個体数が急速に回復している。

内戦が終わった直後の1994年と比較すると、ライオン、アフリカスイギュウ、カバ、オグロヌーといった大型動物が大幅に増えているのだ。野生動物の保護に関して、これほどの規模で成功を収めている例は珍しい。

これは、モザンビーク政府と米国のグレゴリー・C・カー財団が2004年に始動させた「ゴロンゴーザ再生プロジェクト」による一連の活動の成果だ。このプロジェクトでは、ゾウやカバやライオンにとっての楽園は、公園の外で暮らす人間にとっても楽園であるべきだという、新たな共存を目指している。

■破壊と喪失の歴史

アフリカ大地溝帯の南端にあるゴロンゴーザ国立公園。山や高原の森、断崖の渓谷、サバンナ、湿地帯と変化に富んだ自然が広がる。写真は、火山岩が浸食されずに残ってできたブンガ残丘だ(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES)

ゴロンゴーザ国立公園は、アフリカ大陸を南北に貫く大地溝帯の南端に位置する低地にあり、サバンナ、森林、湿地、大きなウレマ湖と、多彩な自然を擁する。もともとは植民地時代の宗主国ポルトガルが、狩猟を楽しむために住民を追い出し、1921年に設けた狩り場だった。60年にモザンビークの国立公園第1号となったときには、ゾウ2200頭、ライオン200頭、アフリカスイギュウ1万4000頭をはじめ、カバやインパラ、シマウマ、オグロヌーなど、アフリカを代表する動物が数多く生息していた。

だが公園があまりに奥地にあり、目が届かないことが裏目に出た。モザンビークは1975年の独立後に内戦へ突入するが、この間、右派の反政府組織「モザンビーク民族抵抗運動」(RENAMO)が、ゴロンゴーザを格好の隠れ場にしたのだ。やがて、迫って来た政府軍との間で戦闘が勃発した。公園本部はロケット砲で破壊され、サバンナは殺りくの舞台となった。このときはゾウだけでなく、シマウマなどの大型動物も、食料のために、あるいは憂さ晴らしのために標的にされ、何千頭も殺された。

1992年の和平協定で停戦の合意が結ばれたが、密猟は続き、周辺住民も食料確保のために罠を仕掛けた。21世紀を迎える頃のゴロンゴーザ国立公園は完全に荒廃していた。

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