服装ルール厳しかった銀行員時代 靴が唯一の自己表現ポルシェジャパン社長 七五三木敏幸氏(上)

――卒業後は群馬銀行に入行。服装に厳しい銀行では、ファッションを楽しめなかったのでは。

「もう、カルチャーショック。こういう世界があるんだなという……。ボタンダウンを着たら『そのシャツの襟はなんだ。うちはそういうのはだめ』とめちゃくちゃ怒られました。割り切って7年弱勤めた銀行では行員スタイルを貫きました。実際、ズボンはすぐ擦り切れるので、29000円くらいのノンブランドの背広をずーっと着て、普通のワイシャツに地味なネクタイ。その反動で週末の服装ははじけて、ボールのジーンズをはいてイタリアファッションを楽しんだんです。銀行の同僚がすれ違ってもわからなかっただろうな」

学生時代からこれまでさまざまなブランドを試してきた。「とにかく未知なるものが大好きなんです。見たことのないものは一度は試してみたい」

――銀行員時代は自分らしさを出せなかったんですね。

「冬に窓口が閉まった後、寒いからとトリコロールカラーのチルデンベストを着ても『だめ』。そこで考えましたね。靴です。足元はだれも見ません。リーガルや(ローファーで有名な)オールデンを履いていました。当時オールデンは4万円もしましたが今なお現役で35年目。ほかにはフェラガモ。靴図鑑のようなムック本にオードリー・ヘップバーンも履いている世界最高の靴とありました。興味を引かれたのでシンガポールに行った時に買ってきました。スニーカーよりも履きやすい革靴があることを初めて知りましたね。その靴もすでに靴底を4回張り替えていて、さらに修理するべきか考え中です」

■自由なファッション楽しめる自動車業界

――メルセデス・ベンツ日本に転職されたころはバブル期のまっただ中。アルマーニが全盛でしたね。

「好きなものが着られる。いよいよ私の季節がきた!という感じで(笑)。アルマーニは日本法人がまだなくて丸井で売っていました。細いネクタイにダブルのスーツを着てね。とにかく未知なるものが大好きなんです。見たこともないものは一度は試してみたい。アルマーニの前はビームスに通い、ブルックスブラザーズが青山にできたと聞けば足を運んだ。とはいえ、どのスーツも私には袖が長く、直しが必要でした。その後ダイムラークライスラー日本(現ダイムラー)、クライスラー日本を経て今の職場にきましたが、最終的にオーダースーツに落ち着いています」

「襟の大きさとのバランスを考えるためネクタイの結び方に迷います」。手前の車モチーフのエルメスのネクタイは描かれた車体の番号が異なっている。「いただきものですが、ル・マンの会場でしか買えないんです」。裏にはル・マン2007と書いてある

――車の個性と同様、自動車メーカーにもカラーがありそうです。ファッションでの違いは。

「銀行では暗黙のルールがありましたが、自動車会社では自由なファッションが楽しめ、自分を肯定できます。ただ私が一緒に仕事をしてきた人たちの中では、扱うのが国産車か輸入車かによる違いは感じました。トヨタの方は保守的な印象です。メルセデスにいた時、階層が私より4段階上の人たちはみなトヨタ出身でしたが、彼らの服装が全員一緒。白のワイシャツ、グレーのスーツ、小紋のネクタイ、それで終了、といった感じ。僕は目立たないようにするという意識がなかったので、今でも『君は相変わらず、そんな格好しているのか』と当時の先輩に言われます」

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