裁判「主戦場」は地裁 三審制でも勝負はここで決まる弁護士 志賀剛一

第一審、控訴審が事実審(事実問題と法律問題をあわせて判断する裁判)であるのに対し、上告審の法的性格は法律審(法律判断のみを行う裁判)です。民事訴訟法が定める上告理由は、判決に憲法の解釈の誤りやその他憲法の違反、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反などに限定されています。

上告審の法的性格は法律判断のみを行う裁判だ

また、上告以外に「上告受理申し立て」という制度があります。これは控訴審の判断に過去の判例違反や法令解釈に関する重要事項が含まれている場合に、例外的に最高裁が上告を受理することができる仕組みです。

しかし、受理するかどうかは最高裁の裁量で、ほとんどが不受理で終わります。最高裁は法律審であって、事実認定は原則として下級審の行ったものに拘束されます。このため、証拠調べをすることはありません。「新たな証拠がでてきたから」というのは、憲法違反でも明らかな法令違反でもありません。そもそも上告や上告受理申し立ての理由にならないのです。

17年、民事での上告で原判決破棄はゼロ

17年の司法統計によれば、民事訴訟において上告された件数は4106件ですが、原判決が破棄されたのは1件もありません。次に、上告受理申し立ては2244件ありますが、ほとんどは不受理です(2199件)。上告した側の取り下げなども22件あります。2%の狭き門をくぐり抜けた23件のうち、原判決破棄はわずか14件となっています。

ちなみに、最高裁では上告を棄却するときには、口頭弁論を開く必要がありません。これに対し、原判決を変更する場合には、被上告人にも反論の機会を与える必要があるから口頭弁論を開くことになります。そのため、上告審で口頭弁論が開かれるということは、原判決を何らかの形で見直すことを意味しています。

最高裁の口頭弁論に立ち会う機会はめったにありません。私も30年を超える弁護士生活の中で、最高裁の口頭弁論に立ち会ったのはわずかに2回です。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。
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