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裁判「主戦場」は地裁 三審制でも勝負はここで決まる 弁護士 志賀剛一

2019/4/25

まず、控訴審は法律用語では「続審」と呼ばれています。第一審の続きをする裁判という意味です。このため、第一審で行われた内容を最初からやり直すわけではありません。ちなみに、刑事裁判における控訴審は「事後審」と呼ばれ、原則として新たな裁判資料の提出は認められず、第一審で取り調べた証拠に基づき判断され第一審判決の当否を事後的に審査する手続きです。

民事の控訴審は建前上は続審ですから、第一審で出せなかった証拠があれば、それを提出することは制度上は可能です。しかし、その証拠がなぜ第一審で提出できなかったのかが高裁では問われることになるでしょう。

また、このところ民事事件の高裁は限りなく「事後審」化しているといわれています。最近では、第1回の口頭弁論期日で結審する割合が8割近くもあり、新たな証人尋問の申請などは認められないことが多くなっているのです。

■第一審の結論が高裁で覆ったのは23%

その場合、結論の多くは第一審と同じになります。2017年の司法統計では、高裁で終了した事件1万3744件中、判決に至ったものが7973件。そのうち原判決取り消し、つまり第1審の結論が覆ったものは1891件(判決に至ったもののうち23.7%)となっています。

原判決の取り消し率はここ10年間、おおむね20%台の前半です。つまり、控訴しても4~5件に1件しか結論が変わらないわけです(もっとも、4~5件に1件も結論が変わるのかという見方もあると思います)。

ちなみに、前述の統計では終了した事件のうち判決に至っていない件数がかなりありますが、その大半は和解による終了です。17年の司法統計では、高裁で終了した事件中、4365件(31.8%)が和解で終わっています。

「高裁はけしからん、もっと時間をかけて審理せよ」と思われるかもしれません。実際、控訴審が事実上の事後審化していることへの批判もあります。しかし、なぜ高裁が1回の審理で結審するのかというと、それは第一審の審理が充実していることの裏返しともいえます。

つまり、主戦場は第一審、地裁なのです。だから、地裁での裁判こそ一番頑張らなければならないのです。重要な証拠が第一審の段階で見つからないということでは、すでに負けも同然です。

■最高裁、憲法違反かどうかを審理

さて、相談のケースでは地裁、高裁と敗訴して今度は最高裁に上告して闘いたいとのことです。担当の弁護士が悲観的な見通しを示しているとのことですが、まさに私も同意見です。上告に際し、手数料として印紙を貼らなければなりませんが、その費用の無駄であろうと私も考えます。残念ですが、裁判はここで断念するのが賢明です。

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