歩くとき、股関節には体重の何倍の負荷がかかる?
この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!
(1)体重と同程度
(2)体重の1.5~2倍
(3)体重の3~4.5倍
歩行時には股関節に体重の3~4.5倍もの負荷がかかる
正解は、(3)体重の3~4.5倍です。
股関節は、太ももの付け根にある関節で、上半身と下半身をつなぐ、体の中で最も大きな関節です。
骨盤の両側にある臼状のくぼみに、大腿骨の球状の先端がはまりこむ構造になっていて、前後や左右、回旋をするように動きます。それぞれの先端部をカバーしている軟骨が、潤滑油の役割を担っています(図)。
胴体と両脚をつなぐジョイント部分となっているのが股関節なのです。立ち上がったり座ったりするときの動作の要となり、上体をまっすぐ立てるときの支点にもなっています。
年間600例以上の人工股関節手術(置換術)を手がけている股関節のエキスパート石部基実さん(石部基実クリニック院長)は、股関節には我々の想像以上の負荷がかかっていると話します。
「股関節には常に大きな負荷が加わっています。通常の歩行時には、体重の3~4.5倍、ジョギング時には体重の4~5倍、階段の上り下りには体重の6.2~8.7倍という負荷がかかります。例えば、体重70kgの人なら、歩くだけで股関節にかかる負荷は210~315kgにもなるのです」(石部さん)
「股関節にかかる負荷の大きさは、ひざや腰の関節にかかる負荷よりも大きく、股関節はそれだけ、ダメージを受けやすい関節といえます」(石部さん)
関節軟骨がすり減ると「変形性股関節症」に
では、股関節がダメージを受けるとどうなるのでしょうか。
正常な股関節は、くぼんだ骨盤と球状の大腿骨それぞれが関節軟骨に覆われているが、この関節軟骨が負荷の繰り返しによってすり減ると、「変形性股関節症」となります。「痛みが出て、歩行に障害が出てきます。当院で診療を受ける方の90%以上がこの病気です」と石部さんは説明します。
腰痛などは幅広いエリアに痛みが生じますが、股関節は、「足の付け根が痛い」「歩くときにうまく踏み出せない」というように、股関節そのものに症状が出ます。立ち上がりにくくなったり、足の爪を切るのが困難になってきたら、股関節に問題が出始めている可能性があります。
痛みの出た股関節をかばうように歩くと、肩が左右に揺れるようになります。体がバランスを保とうとするためですが、ゆがんだ姿勢や動作によって肩や腰、ひざ、足首などに負担がかかり、痛みが連鎖することも多くあります。
(日経Gooday編集部)
[日経Gooday2019年4月22日付記事を再構成]
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