2019年3月まで放送されていたNHK連続テレビ小説『まんぷく』で主人公・福子の姪タカ役で出演。26歳ながら、初登場のシーンでは14歳の役に挑んだ岸井ゆきの。女優としてのキャリアは09年にドラマ『小公女セイラ』でスタートし、既に10年選手だ。16年に大河ドラマ『真田丸』に出演し、翌17年には劇団☆新感線の舞台『髑髏城の七人 Season風』が高く評価されるなど、業界内では早くからブレイクが期待されていた。

「本当に朝ドラってすごいなって思います。毎日ニュースが出て、タカが出産したときには“岸井ゆきの出産”みたいな。えっ、何のこと? って私がビックリしたり(笑)。驚きの連続です。
朝ドラは本当に特殊で、こんなにも1つのキャラクターを長く演じられることはないから、今とてもスペシャルな経験をしていると思います。以前は身長が低いことで絶望したこともあるんですけど、背が小さくてこの顔だったから視聴者の方から『14歳に見える』と言ってもらえた。背が小さくて良かったと思えました」
芸能界へは、高校時代に「被写体になってほしい」と女性カメラマンに声をかけられ、現在の事務所を紹介されたことから。女優への憧れや目標は今もないという。
「ただ、『お芝居ってこういうもの』と自分で決めつけないってことや、演技をすることに慣れない、ということはいつも思っています。だから全力で考える。今後も台本と向き合っていきたいです」
自由度を上げていく

「いつも全力投球」という岸井。新作映画『愛がなんだ』では、成田凌を相手に、恋に一途で不器用なテルコ役で主演。ドラマや映画、舞台と引っ張りだこだが、女優としてどこを目指すのか。
「自分はテルコのように恋愛が一番になるタイプではないんですけど、原作を読んだらすごく面白くて演じたくなりました。ちょっとクレイジーな女性だけど愛おしくて、こんなパワフルな役には今後なかなか出会えないだろうと。成田さんとの共演も刺激になりました。私は考え過ぎちゃうぐらい考えて、監督に確認をとりたくなるんですけど、成田さんはすごく素直に演技をする。自分ももっと自由度を上げたいと思いました。
今一番興味があるのは、海外の方とのお仕事です。映画祭などで出会った方は、みなさん日本人とは違う感性を持っていて、とても面白くて。この映画で海外の映画祭に参加したり、舞台の海外公演なども体験してみたい。それから、以前、演じた『SICKS』のようなコント劇もまた挑戦してみたいです。芸人さんは俳優さんとはまた違う角度からビュンビュン、玉が飛んでくる(笑)。毎回とても新鮮な体験ができるんです」
(ライター 前田かおり)
[日経エンタテインメント! 2019年4月号の記事を再構成]