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ビリギャル支えた自己肯定感 私は幸せな子増やしたい

小林さやかさんインタビュー(下)

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NIKKEI STYLE

ビリギャルこと小林さやかさんは今春から大学院で教育学を学び始めた。「聖徳太子」を「せいとくたこ」と読んでいた女子高生が慶応大学にチャレンジした時から今に至るまで、さやかさんを支えてきたのは、メンターたちとの出会いだった。インタビューの後半は、さやかさんの「人と出会う力」と教師や親たちへのメッセージを聞いた。(聞き手は藤原仁美)

尊敬できるメンターは誰にでも対等な目線で接する

――さやかさんのこれまでの人生、出会いに支えられてきていますよね。出会い力が本当にすごいと思う。メンターが何人もいますよね。

私の出会い運は最強です。メンターと呼べる大切で尊敬できる人たちに何人も出会っています。年齢も職業もばらばら。でも、1つ共通していることがあります。それはみんな目線が対等だということ。絶対に見下したりしないんです。

リッツ・カールトンホテルの元日本支社長、高野登さんは、私が大学生時代に著書を読んで感動して「リッツ・カールトンホテルに就職したい」とホテルのフロントに押しかけたというエピソードを後で聞いて、ある日私に会いたいと言ってくださった方。去年の春から夏までインターンした札幌新陽高校でスキーをがんばっているシオリだって私のメンターです。今春から学んでいる聖心女子大の益川弘如教授もそう。益川教授は大学の先生なのに目線は対等どころか、下から来るくらいです。

もちろん、最初に出会ったメンターは、ビリギャルの本を書いた坪田信貴先生でした。高校2年のときに塾で出会って、この人は学校の先生とは全然違うなって思った。私がどんなばかなことをいっても、「面白いねえ」って本気で楽しんでくれました。しばらくして気づいたけれど、坪田先生は生徒一人ひとりに合わせて話題もちゃんと切り替えていました。生徒との話から、坪田先生自身が学ぼうとしているのです。

高校時代、学校の先生たちの多くは私を見下していました。たばこを持っていたことが見つかったとき、「君は人間のクズだ」って校長先生に言われて、憤慨したこともあります。でも、実は私もそんな先生たちを見下していました。大人に知っておいてほしいのですが、生徒はそういう先生が生徒を見下す目線には気づいています。

ビリギャルとして有名になってから、全国の講演で学校の先生とたくさんお会いしていますが、どこの学校にもやっぱりそういう先生がひとりはいる。いや、結構いる。先生が生徒に上から教えるという目線のままでは、生徒にはメッセージが伝わらないのになあって思います。

――大人になったビリギャルから見ると、今の高校はだいぶ違って見えるのでしょうね。

自分が高校生の時にはわからなかったことに、たくさん気づきましたよ。例えば校則!私は茶髪ミニスカで校則なんてバカらしいと思っていたけれど、校則は学校からの愛なんですね。女子高生が下着の見えるような格好で歩いていたら、やはり身の安全が守れないです。そういうことを未然に防ごうとする愛情なんだって、初めて気づきました。

私は教員免許をもっていないので、インターンした札幌新陽高校では、生徒たちから見るとちょっと年上のお姉さん的存在。先生には言いづらいことを生徒から相談されることもありました。

高校生って、性に対して知識はないのに興味ばっかりある。でもそれに対して、先生や親はすごく言葉を選んでちゃんと大切なことを伝えられないままでいる。だから、今回出版した「キラッキラ の君になるために ビリギャル真実の物語」(マガジンハウス)では私が代わりに、昔はわからなかったけど今ならわかる、大切なことを私の言葉で伝えてる。性教育のくだりだけでもぜひ中高生に読んでほしいです。本当に大切なこと。

お母さんたち、「ああちゃんになれない」って悩まないで

――お姉さん的存在だと、高校生からつらい話を打ち明けられることもあったでしょうね。

家庭の問題や悩みを打ち明けられることもありました。「私には、さやちゃんにとってのああちゃん(さやかさんのお母さん)みたいな人がいないもん」って嘆く子もいました。確かに、家庭の問題は根深いなあと思いました。子どもにとって親の在り方ってめちゃくちゃ大きい影響を与えますからね。

私の講演を聞いたり坪田先生の本を読んだりしたお母さんたちは、自己嫌悪に陥ってしまうこともあるようです。「私はああちゃんみたいにすごいお母さんじゃない」って。たしかに、ああちゃんは本当にすごいです。ビリギャルだった私が「私、慶応に行く」って宣言したときも「さやちゃん、すごいね。よかったね。わくわくすることが見つかったんだね」って言ったんですよ。こんなことなかなか言えないでしょう。私はああちゃんのおかげで、自分は大丈夫っていう自己肯定感だけはしっかり持って育ちました。

でも、お母さんたちには他人と自分を比較しないでほしいのです。いいお母さんにならなくていい。それよりも「あなたのしたいことを書けば神様がその力をあなたに与えてくれるプラチナチケットがあったら、お母さん、あなた自身は何を書きますか?」って聞きたい。

大人がまずは、キラッキラでいてあげてほしい。「勉強しなさい」って追いかけまわして言うよりも、大人が自分自身の人生を楽しんでいる姿を見せる方がよっぽど英才教育になると思うんです。

ワクワクする何かをみんなに見つけてほしい

――4月からは大学院生のさやかさんに改めて聞きます。勉強ってなんでしょう?

私にとって、勉強はツールです。それは、受験勉強の時から変わっていません。私は目標もないのにひたすら勉強するなんて無理。でも、「これがやりたい」「こうなりたい」という目標ができて、そのためには勉強しなければならないなら、勉強しようと思えるのです。

25歳ごろからビリギャルとして急に有名になって、講演や札幌新陽高校のインターンを通じてたくさんの人と出会った。「私には無理だよ」ってあきらめている子たちの声も聞きました。そして私は「もっと幸せな子供を増やして、学校をイケてる場所にして、お母さんお父さんを笑顔にしたい」って思うようになりました。だから大学院で勉強をしたいんです。

私が学校の先生になればいいいのにと言われることもあります。でも、先生になったら舞台が自分の学校だけに限られちゃうでしょ?私はもっと大勢にメッセージを伝えていきたい。

「キラッキラの君になるために ビリギャル真実の物語」という本を出したのは、そういう理由もあります。

このタイトル、本当はかなり恥ずかしいんですけど、私の人生をただ書いた自叙伝的な本ではなくて、私がこれまでの人生で学んだことを体験談とともに書いた本。私から後輩たちにつなぐ「バトン」のような本にしたくて書きました。文体もわざと、私がふだん話している口調にしました。普段本なんか読まないような子たちにもメッセージを届けたかったんです。

私はべつに、みんなに勉強しろと勧めているわけではないです。勉強でもスポーツでも、アイドルでもなんでもいい。人生がワクワクするような何かをみんな見つけてほしい。見つけたら、なりたい自分になるために一歩踏み出してほしいなあと願っています。

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