脳の萎縮は「BMI 30以上で内臓脂肪型肥満あり」の人で最大
次に、BMIと内臓脂肪型肥満(ウエスト・ヒップ比が高値なら内臓脂肪型肥満ありと見なした)に基づいて、人々を以下の6群に分類しました。
・BMI 25未満/内臓脂肪型肥満なし
・BMI 25未満/内臓脂肪型肥満あり
・BMI 25以上30未満/内臓脂肪型肥満なし
・BMI 25以上30未満/内臓脂肪型肥満あり
・BMI 30以上/内臓脂肪型肥満なし
・BMI 30以上/内臓脂肪型肥満あり
BMIが30以上の肥満者の72%が、内臓脂肪型肥満でした。同じBMI30以上の人でも、内臓脂肪型肥満ではない人に比べ、内臓脂肪型肥満の人では、灰白質の萎縮が有意に大きくなっていました。一方で、BMIが30未満の集団においては、内臓脂肪型肥満の有無は萎縮の大きさに影響を及ぼしていませんでした。
今回得られた結果は、灰白質の容積が最も萎縮しているのは、BMIが30以上、かつ、内臓脂肪型肥満の人であることを示しました。
研究者たちは、「灰白質の萎縮が肥満を引き起こすのか、肥満によって萎縮が生じるのかは明らかではなく、今回認められた現象に因果関係があるのかどうかも不明だが、灰白質の萎縮がその後の神経変性疾患(認知症など)の発症にかかわることは既に示されている」と述べています。
適切な体重を維持すれば認知症リスクを減らせるかどうかを明らかにするためには、今後、大規模で長期にわたる研究が必要と考えられます。
論文は、Neurology誌2019年2月5日号に掲載されています[注4]。
[注4]Hamer M, et al. Neurology. 2019 Feb 5;92(6):e594-e600.
大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

[日経Gooday2019年4月17日付記事を再構成]