コーヒーを五感で体験 急増するロースター併設カフェ
今年2月末、東京・中目黒にオープンした「スターバックス リザーブ ロースタリー東京」はいまだ連日行列の人気ぶり。店内にある巨大なロースター(焙煎〔ばいせん〕機)も話題になっているが、最近はほかにもロースター併設カフェが増加中。都内の3店舗を訪れ、魅力を探ってみた。
東京・南青山に2018年10月にオープンした「Little Darling Coffee Roasters(リトル ダーリン コーヒーロースターズ)」は、カフェ・ショップ・オフィスからなる施設「SHARE GREEN MINAMI AOYAMA (シェアグリーン ミナミアオヤマ)」内にあり、店の前には緑の広場が広がる。
倉庫をリノベーションした店内は、天井が高く開放感があり、外国風のおしゃれな雰囲気。カウンター内に置かれたドイツの老舗焙煎機「プロバット」もクールなたたずまいだ。
同店では世界各地のえりすぐりのコーヒー豆を季節にあわせてセレクト。店内のロースターで焙煎した豆を常時5種類用意している。同店マネジャー赤川直也さんは「コーヒーフェストラテアート世界選手権2016」で世界第2位に輝いた実力の持ち主でもある。メニューはホットコーヒーやコールドブリュー(水出しアイスコーヒー)、エスプレッソやラテなど定番のほかに、コーヒーソーダなどユニークなドリンクも。
お薦めの「ハンドブリュー」(600円税込み)を注文してみた。コーヒーは単一の豆を使うシングルオリジン2種類から選択可能。抽出方法も油分を含んだまろやかな仕上がりの「アメリカンプレス」と、ペーパーフィルターを使うことですっきりした味わいを楽しめる「カリタウェーブ」の2種類から選べる。取材日はエチオピアの豆をカリタウェーブで抽出してもらった。かんきつを思わせる酸味があり、フルーティーで雑味のないすっきりした味わい。店の前に広がる緑の広場を眺めながら、いれたてのコーヒーをゆっくり楽しむ時間は格別だ。
焙煎は通常は火曜と金曜に実施。豆の量によっては月曜や木曜に焙煎することもあるそうで、焙煎日であれば、待ち時間も豆がはぜる音や香りを楽しめる。
赤川さんは、ロースターを併設するメリットについて次のように説明してくれた。「お客様は実際に飲んでいるコーヒーがどのような過程を経て提供されているのかを知ることができ、生豆の色や焙煎の方法など新しい発見を楽しんでいただけます。お店としては、店舗で焙煎することで豆のクオリティーを管理しやすく、品質を保ったコーヒーを適正価格で提供できます」
中華風バーガー「BAO」やデザートなどコーヒーに合うフードも多彩。これからの季節、天気がよければ店前の広場で、のんびりピクニック気分を楽しむのもよさそうだ。
今年2月に東京・渋谷にオープンした「WOODBERRY COFFEE ROASTERS SHIBUYA(ウッドベリーコーヒーロースターズ シブヤ)」は、東京生まれのスペシャルティーコーヒー専門店。都内に4店舗を展開しており、用賀本店には以前からロースターがあったが、店の奥にあるため、客は遠目にしか見られなかった。渋谷店では店内に米国のディードリッヒ社の焙煎機が設置され、客は間近で焙煎の様子を見ることができる。
「『ビール工場で飲むビールはなぜかおいしい』と感じるように、ロースター併設カフェには現場感や臨場感があり、魅力だと考えています。コーヒー生豆が黄色から茶色に変わっていく様子や香ばしい匂いなどを実際に感じることができ、一種の工場見学のような体験を皆様にしていただけると思います」(ウッドベリーコーヒー代表取締役の木原武蔵さん)
同店には3種類のコーヒーを一度に楽しめる「エスプレッソコース」というメニューがある。同じ豆をエスプレッソ、ミルクビバレッジ(カフェラテ)、シグネチャービバレッジ(コーヒーの創作ドリンク)という3通りの飲み方で楽しむことができるのだ。
「エスプレッソコースでは、その豆の様々な香りや味の違いを体験していただくことができます。栽培の背景のストーリーと一緒にコーヒーの味を楽しんでいただければ幸いです」(木原さん)
豆の産地は2種類から選択でき、今回はエチオピアのゴチチ村の豆を使った「エスプレッソコース -エチオピア ゴチチ」(1400円税別)を注文してみた。
3杯がほぼ同時に出てくるのでどれから飲んでもよいが、エスプレッソ、ミルクビバレッジ、シグネチャービバレッジの順で飲むのがおすすめとのこと。さっそくエスプレッソから味わってみると、軽やかな酸味と甘みが印象的で香りも華やか。ミルクビバレッジはクリーミーな舌触りで、上品なミルクチョコレートのよう。シグネチャービバレッジはエスプレッソにエディブルフラワー(食用花)シロップとヨーグルトをあわせ、上からナツメグとコショウをふりかけたもので、コーヒーの華やかな香りにシロップの香りも加わり、スパイスがいいアクセントになっている。同じ豆でも提供方法によってここまで味わいが変わるのがおもしろい。
ちなみにコーヒーを一度に3杯も飲むということは日常ではあまりないが、グラスはやや小ぶり、かつ味わいもまったく違うので、飲み飽きることも満腹になりすぎることもなく最後まで楽しめた。
「エスプレッソコース」は現在ほかにグアテマラのペニャロハ産の豆を使った「エスプレッソコース -グアテマラ ペニャロハ」(1200円税別)もある。
客層はさまざまで、外国人の姿も多い。ちなみに午後6時からはコーヒーバーになり、コーヒーを使ったカクテルを提供している。コーヒー業界とバー業界の架け橋になるような店を目指していきたいそうだ。
米バージニア州発祥のカフェ「Greenberry's COFFEE(グリーンベリーズコーヒー)」は、19年2月に東京・新宿の「FOOD HALL BLAST! TOKYO」と大阪・難波の「FOOD HALL BLAST! OSAKA」に、同ブランド初のロースター併設店舗をオープンした。
新宿の「FOOD HALL BLAST! TOKYO」へ行くと、店の入り口近くに置かれた小型のロースターが出迎えてくれた。焙煎は毎日午前中に行っており、生豆の投入から焙煎、焙煎豆の冷却までの全工程を見ることができる。透明なロースティンググラスを見れば豆の焙煎具合が分かり、透明なボトル(通称、チャフボトル/上の写真の右側の丸いグラス)の中では生豆の表面から取り除かれたチャフと呼ばれる豆の皮が舞っている様子が見えて面白い。
豆は世界各地の農場から厳選された生豆を米国本部から月に1度日本へ空輸しているそう。店内で焙煎した豆は3日ほど寝かせて飲みごろになったところでひいて提供しているとのこと。
お薦めの「ニトロコーヒー」(ショート450円税別、ロング600円税別)を飲んでみた。18時間かけてゆっくりと水で抽出したコーヒーに、ニトロ(窒素ガス)を充てんしたもので、見た目はまるでビールのよう。泡の舌触りはなめらかで、酸味や甘みのバランスがいいリッチな味わい。アイスコーヒーのようにキンキンに冷えておらず、ゆったり楽しむことができる。
同店のロースターは事前に登録したプログラミングに基づき、少量焙煎ができるのが特徴。ブランドのコンセプトである「Small batch&Big flavor(少量焙煎が生み出す豊かな香り)」を店内で実現している。
「今後はお客様の要望に応じて焙煎するオーダーメード焙煎なども行っていく予定です。また、焙煎士が店舗にいなくても焙煎ができる仕組みを生かして今後のFC展開においては焙煎機設置店を増やしていく計画です」(同店を経営するK&BROTHERS代表取締役の岩谷良平さん)
客層は20~40代の女性が中心で、店の前を通行中に焙煎中の香ばしい匂いにひかれて来店する客も多いとか。深煎りのコーヒーによく合う10種のオリジナルスコーンも提供するなど、フードメニューにもこだわっている。
雰囲気やメニューもさまざまなロースター併設カフェ。いろいろ巡ってお気に入りを見つけてみてはいかがだろうか。
(GreenCreate)
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