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マニュアル10分の1 余計な仕事削減 ファミマ社長

ファミリーマート 沢田貴司社長(上)

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NIKKEI STYLE

24時間営業の問題で注目を集めるコンビニエンス業界。ファミリーマートでは2016年に沢田貴司社長が就任以来、次々と業務改革を手がけています。現場でレジ打ちまで体験した経営者がコンビニエンスストアの働き方改革にどう取り組んでいくのか、沢田社長にお聞きしました。

自らレジに立って気づいたこと

白河桃子さん(以下敬称略) 沢田社長は16年9月のサークルKサンクスとの統合の際にファミリーマートの社長に就任され、以来、業界に先立つ改革を次々と進めていらっしゃいます。私が審査員を務めている「エイジョカレッジ(企業から選抜された営業職女性による、コンテスト形式の研修プログラム)」に参加されたファミマチームの女性たちも、本当にイキイキとされて、プレゼンテーションも素晴らしかったです。

沢田貴司さん(以下敬称略) それはよかったです。ダイバーシティー推進の最終的な目的は「お客様への付加価値を高める」ことですが、結果的に社員の働き方の効率化や生産性向上にもつながると期待しているところです。

白河 沢田社長は「現場の働く環境を大切にする。そうでなければ勝てない」とよくおっしゃっていますね。人手不足や高機能化が進むコンビニ業界で、実際にどんな取り組みをなさっているのか、そのベースとなっている考え方はどういうものなのか、今日はお聞かせください。さっそくですが、「現場主義」を徹底するため、ご自身も店舗研修を受けてレジに立つこともされたのだとか。これは社長就任時のことですか?

沢田 社長に就任する前に現場のことを深く理解したいと思い、店舗研修を行いました。

白河 コンビニレジに立ってみたことで、どんな気づきがありましたか?

沢田 「現場は分からないことだらけ」という気づきですね。例えば、接客マニュアルには、「30度のおじぎをする」ことや「会計時にレジにお客様の性別・年齢を打ち込む」こと、あるいは「ありがとうございました。またお越しくださいませ」といった接客用語の一言一句に至るまで、すべて決められて記載されている。その一つひとつに対して、「そもそもなぜこれをやらなければいけないのか」という疑問を素直に持ちました。

白河 異業種経験が豊富な沢田社長からすると、まか不思議な習慣だらけだったのでしょうか。そして、それが生産性を落とす要因とも思えたのだと。

沢田 めちゃくちゃ思いましたね。本部から店舗に納品された販促物が、どの売場に取り付けるものなのかも分かりにくく、現場にものすごい負荷をかけていると痛感しました。なぜ、ここまで放置してしまったのかといらだちを感じたほどです。

全部ぶっ壊さないといけない

白河 コンビニの普及と共に、コンビニが請け負うサービスもどんどん増えてきて「多機能」が求められます。消費者としては便利ですが、働く人にとっては負担が増えていくばかりなのかもしれないですね。

沢田 業務の足し算ばかりで、引き算が全然なかった。これでは現場が疲弊するだけだと気づき、「一度、全部ぶっ壊さないといけないな」と感じました。

白河 コンビニの業務ってかなり緻密に標準化されたものと思っていたのですが、決してそうではなかったのでしょうか。

沢田 他社のことは分かりませんが、ファミリーマートの場合は経営統合を繰り返して成長してきた会社ですので、マニュアルも単純に足し算を重ねる一方だったのだと思います。だって、マニュアルが全1600ページ、宅急便の説明だけで100ページあったんですよ(笑)。そんな分厚いマニュアル、パートやアルバイトの皆さんが主力の現場で一人ひとりが読んでくれるわけがないじゃないですか。ちょっと考えれば分かる非合理・非効率が放置されたままだったのが事実ですね。

ただし、過去を全否定するつもりはなく、店舗拡大を最優先する時代には手をつける余裕がなかったのでしょう。その勢いがあったからこそ、いまの1万7000店舗という規模までたどり着けたことは事実です。しかし、これからはやみくもに規模を追求するのではなく、逆に「店舗数は減らしてもいいから一店舗一店舗の質を高めていくことへ」と戦略を転換しました。

白河 店舗の質を高めるためには、現場の働き方改革、生産性向上も重要なテーマになっていったということですね。

沢田 非常に重要です。生産性を高めるためにまず着手すべきは、生産性の低い仕事をやめること。未来につながらない仕事に投資をしても何も付加価値を生み出しません。ですから、社長就任から約2年をかけて、誰がどう頑張っても改善の見込みがない不採算店舗などを約3300店ほどクローズしました。

マニュアルは10分の1の厚さに

白河 店舗を減らしてもという考え方はすごいですね。選択と集中の戦略ですね。1000ページあったマニュアルは薄くなりましたか?

沢田 今は抜粋版として100ページまで減らしました。また、購買データ収集のために会計時に年齢・性別をレジに打ち込んでいた作業も、検証の結果、精度が低いとわかったのでやめました。清掃についても用具を改善したり、作業工程を変えたことで、作業時間を減らすことができました。

白河 かなりオペレーションが改善されたんですね。

沢田 いや、まだまだですよ。できることはまだ山ほどあると思っています。特に改革しないといけないのは本部側の意識です。本部からの提案は、ともすると非常に「独りよがり」になりがちなんですよ。

例えば、レジカウンターで販売している「ファミチキ」などの揚げ物ですが、商品開発担当は「揚げ時間が○秒の違いでこんなに美味しくなる」と言います。たしかにそうかもしれないけれど、ストアスタッフが商品ごとに異なる揚げ時間を覚えるのは大変です。むしろ商品開発の段階で工夫して、質を落とさずに揚げ時間を統一するといった発想が必要なのです。

また、揚げ物は冷凍された状態で店舗に納入されるので、商品の中身を一目で判別しにくい。「袋に大きく商品名を記載する」といったちょっとした工夫をプラスするだけで、毎日の仕事が少しずつラクになるんです。単純ですが、このレベルでもできていないことがまだまだあります。現場の働き方改革の実現には、こうした小さな改革の積み重ねが重要だと思っています。

白河 小さな改革の積み重ねですね。その効果は測定しているんですか?

沢田 定期的に加盟店の皆さんにアンケートをとって、店舗オペレーションの改善度合いや業務にかかる時間の推移をチェックしています。評価を真摯に受けとめて新たな課題を見つけていく。宅急便に関しては、最近はメルカリさんの取り扱いが多いのですが、店舗で荷物のサイズ測定をしなくても受け付けができる仕組みに変えたりしています。

白河 仕組みそのものを変えることで、現場の負担を減らしていく。

沢田  仕組みを変えていくことが本部の仕事ですよ。店舗では、今日から働き始める人にも即戦力として活躍していただきたい。また、ストアスタッフとして高校生からシニア、外国人など、多様な方々が働いてくださっている。せっかくファミリーマートを選んでいただいた方々に、「ここで働いてよかった」と思える環境を整えないといけません。

地域密着型のコンビニを目指す

白河 最近は、時給の高い時間帯だけを狙って複数の店舗で働くベテランパートさんもいると聞きます。これはすべての業界に言えることですが、これからは「決められた業務や働き方に無理やり人を収める」のではなく、「一人ひとりが希望する働き方を支援する」ような人間中心の働き方にシフトしている気がします。

沢田 私もそうだと思いますし、これからますますその流れは加速していくはずです。社員にしても、会社の都合で地方のあちこちに転勤させる人材配置は見直す必要があると考えています。その地域に根付いた人が、地域の人の信頼を得ながら貢献していく働き方が、これから我々の目指すべき姿だと強く思っています。都心で暮らしていると気づきにくいですが、常連のお客様が大勢いて、好調な売り上げを維持している店舗の多くは「地域密着型」です。これからは「地域『異常』密着型コンビニ」を目指します(笑)。

白河 数を伸ばす戦略をとらずに、競争力を担保していくために何が必要だと思いますか?

沢田 一番大事なのは、加盟店と本部の強固な信頼関係の構築です。商品政策ひとつとっても、本部の企画意図がきちんと伝わり、加盟店の皆さんがそれを楽しみながらお客様に提供する。そんな関係性をつくることが重要だと考えています。

その結果として、加盟店の皆さんが地域のお客様に貢献し、ファミリーマートというチェーン全体としても地域社会に貢献できる。そういう地域ごとの関係構築ができた後に店舗数が増えるのは自然な形だと思いますが、最初から「数ありき」という出店スタンスはとらない。

極端な言い方をすると、しばらくは店舗の数は追わない。もっと丁寧に、お客様の顔が見える商売をしていかなければいけないと思っています。

優秀なパートさんに活躍してもらう仕組みを

白河 優秀なパートさんの正社員化を進めているとも聞きました。

沢田 首都圏から始めて、全国にまで広がってきた取り組みです。きっかけとなったのは、毎年開催しているストアスタッフの表彰制度「エクセレントスタッフアワード」の授賞式での気づきです。

「エクセレントスタッフ」とは、全国の店舗で働くストアスタッフ約20万人の中から、優秀な仕事ぶりが評価され、各地域の代表として選出された方々です。そのうち95%が女性で、それぞれの店舗の近隣に住む主婦の方が多いのです。そのお店で長く働いていただくことで、地域に密着し、地域のお客様に感謝されるような関係性を作りあげてこられたスタッフさんがとても多いんです。

そこで思ったのは、本来はこういう方にこそ店舗を指導する立場として活躍していただくべきではないかということ。もちろん、在籍する店舗のオーナーさんのご理解は必要ですが、一個店のエクセレントスタッフからエリア全体の運営指導を行う「QSCトレーナー」になれるキャリアコースを導入していて、すでに10人のトレーナーが誕生しています。

白河 その方々は地域密着型のまま社員として採用されるということですか?

沢田 そうです。指導を受ける側になる近隣店舗のスタッフさんにとっても、同じ地域で長年働いてきた方が指導役に回るというのは、すごく納得感を得やすいみたいです。「私もQSCトレーナーを目指したい」とおっしゃってくださる方もたくさん出てきました。

白河 女性の再就職コースとして、とても希望の持てるお話ですね。ただの人手不足解消目的の社員登用ではなく、持てる人材をフル活用する目的である点も面白いです。

沢田 QSCトレーナーからは、「自分はストアスタッフで終わると思っていたのに、その先にステップアップできてうれしい」と喜んでいただいています。さらに素晴らしい実績を挙げてくださったら、いずれは幹部になっていただくのもいいんじゃないかと思います。

白河 そうやって働く人自身がイキイキとされていたら、きっと地域の方々もお店のファンになりますよね。

沢田 それが理想です。

(来週公開の後編では、本部の改革、24時間営業の見直しを含む加盟店との関係強化などについてお伺いします。)

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 宮本恵理子)

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