人を育てる3つの「き」 昭和女子大・坂東氏の育成論昭和女子大学 坂東真理子理事長兼総長(下)

――その後、意識は変わったのですか。

「30歳ごろに総理府婦人問題担当室が設置され、私はその初代メンバーになりました。女性の労働力率(15~64歳人口に占める労働力人口の割合)のいわゆる『M字カーブ』は、今でこそ社会に広く認知されています。つまり、結婚・出産期に当たる年代に労働力率が一旦落ち込み、育児が落ち着く時期に再び上昇するという傾向です。当時はちょうど、この『谷』が非常に深かった。データは雄弁でした。個人の能力の問題だと思って済ませていたことが、実は社会の問題だったと気付いたのです」

「日本で初めての『婦人白書』を作ることを自ら提案し、アシスタントと2人で、500ページ以上を書き上げました。文部科学省や厚生労働省といった『主流』の官庁にいたら、女性問題にここまで本腰を入れて取り組む機会はなかったかもしれませんね」

異なるタイプのリーダーとの仕事で成長

――自ら提案して実行するとは、優秀な若手だったんですね。

「とんでもない。単純な事務作業が本当に苦手で。今だから笑って言えることですが、ページの順番がバラバラの状態の資料が大臣の手元に行ってしまったり、何度も資料校正をしたはずなのに、一番目立つ見出しの部分に誤字があることに全く気付かなかったり……。当時は大目玉をくらったものです」

「公務員は『何でも要領よくできる人』が評価される傾向にありますから、私はあまり部下に持ってうれしいタイプではなかったかもしれません(笑)。ただ、たくさんの違ったタイプの優れた『リーダー』の方たちと一緒に仕事ができたことが、今の私の血肉になっています」

埼玉県副知事も務めた坂東氏。「みんなで力を合わせて仕事を成し遂げるのは楽しかった」と振り返る=昭和女子大学提供

――手本にしているリーダーはいますか。

「駆け出しの新人のころにお世話になった男性上司は、何でもできるオールラウンダーとは程遠いデコボコの私のことを『文章が上手だ』『表現が豊かだよ』と評価してくれました。『婦人白書』はまさにそれを生かした仕事でもありました」

「私も40歳代で管理職を務めるようになってからは、部下の足りないところではなく、いいところを見ること、信頼することを信条にしています。経営学者のピーター・ドラッカー氏のマネジメント理論でもいうでしょう。『社会に貢献できるのは自分の強みにおいてであって、その逆はない』と」

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