人を育てる3つの「き」 昭和女子大・坂東氏の育成論
昭和女子大学 坂東真理子理事長兼総長(下)
昭和女子大学の坂東真理子理事長兼総長
少子化の中、キャリア教育やグローバル系学部の新設などによって、志願者数を大きく伸ばしている昭和女子大学(東京・世田谷)。その改革を先導した理事長兼総長の坂東真理子氏(72)は官僚時代、日本初の「婦人白書」を執筆したほか、男女共同参画局の初代局長を務めるなど、自ら時代を切り開いてきた。官僚としての34年間のキャリアの中で培ったリーダーシップについて聞いた。
――昭和女子大が改革の柱として掲げる「キャリア教育」や「グローバル教育」は、どの大学も注力している分野です。特に女子大が担うべき役割とは何でしょう。
「そうした知識やスキルは、もちろん共学の大学でも教えられます。ただ、現実として、女性の社会での役割や制度は大きく変化したのに、学生のマインドセットはまだ十分には変わっていません。出産や育児などとの両立の負担は女性に偏り、女性自身が古い母親像に縛られているので、結果として仕事を辞めてしまうケースは依然として少なくないのです。人生の設計の仕方を、女性向けにしっかりと教えるのが女子大の役割だと思っています」
――官僚の世界は男社会です。ご自身が女性であることで苦労した経験は。
「私は共学で学んできたこともあって、20歳代のころはむしろ、『女性であること』を全く意識していませんでした。女性の地位向上を訴える活動などを目にしても、有能でありさえすれば女性だからといって差別されるはずがない、不平不満を言う人は能力がないからなのだ、なんて思っていたんですよ」
自分自身を苦しめていた
「振り返れば、その意識が自分自身を苦しめていたと思います。私は総理府(現内閣府)で働きながら24歳で結婚、26歳で第1子を出産したので、仕事との両立には四苦八苦しました。周囲の男性は国会対応のために3、4時間の睡眠で頑張っているでしょう。それなのに、私はいつも家庭のことにも追われていて十分な仕事ができないし、勉強する時間も確保できない……。その全ての原因は、自分に能力がないからだと思い込んでいました」