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開国インバウンド

外国人に3万円の花見 青森の料理や器、手ぶらで満喫 「たびすけ合同会社西谷」西谷代表に聞く(下)

2019/5/20

――地元の反応は? 普段は無料で入れる弘前公園で3万円は高すぎると言う人もいそうですが。

「地域に暮らす人が一番、地域の魅力に気づいてない可能性があるんです」

忍者姿のスタッフに案内され、桜の下で弘前の郷土料理を楽しむ

「例えば青森に暮らしているとりんごをもらう事が多く、買った事がないと言う人もいます。それが当たり前、という世界で暮らしていると、りんごが価値のあるものだと気付けず、稼ぐことにつながりません。でもお金を払ってりんごの収穫体験をしたい人は世界中にいます。地域を良くしたいのなら、観光に携わる人は外に出るべきです。自分たちの当たり前は、世界にとっての当たり前ではないことに気付くためにも」

■観光事業者は海外体験を

――インバウンド客に来てほしいのであれば、まずは海外旅行にいきましょうというのは、私が講演などで伝えていることと同じですね。自ら旅に出て様々な文化や価値観、考え方に触れることで、視野を広げ、ビジネスのヒントを得られます。

「今たまたま日本に来ている外国人客は、その前にメキシコやインドに行っていたかもしれない。そのような世界の視点を持つ相手の気持ちを理解するには、自分たち日本人もどんどん外に出ること、アウトバウンドを推進していかなければいけません。特に青森県はパスポート保有率が全国最下位と言われています。だからこそ観光に携わる人はもちろん、そうでない人も世界に出ていってほしい。そんな思いも込めて東北の観光事業者らで立ち上げた団体に『東北インアウトバウンド連合』と名付けました」

――今でこそ日本人、外国人向けの人気ツアーをたくさん作っていますが、西谷さん自身にも失敗はあったのでしょうか。

「もちろんです。失敗した数の方が多いです。例えば、青森県は水がきれいなので、以前、水のツアーをやったことがあります。ペットボトルをたくさん用意して、水をくみにいって、最後にそれでコーヒーをいれて味の違いを確認する、というのやってみたら、それほど違いが分からなくて(笑)。変な空気になってしまったことがありました」

「ただ、その失敗をどう生かすかのほうが大切。失敗してもいいから、とにかく小さなことから初めて、PDCA(計画、実行、評価、改善)を回していくことです。そういう意味では小さな失敗をたくさんしたほうが良いと思います」

――失敗を恐れずチャレンジすることが大切ですね。お客様を案内するにあたって、ガイドとして必要な要素を挙げるとしたら何がありますか。

「何か一つ得意分野を持つこと。マニュアル通りにやることは大前提であって、でもそれだけではつまらないコピーロボットになってしまう。その人だけの軸を持つことで個性が出ます。ガイドとお客様の関係はワインとチーズみたいなもので、すごく相性のいい時と、そうでもない時があります。一人が全てのお客様にマッチしなくてもいいんです。『お酒については誰にも負けない』『アニメについて語らせたら一番』『歴史については何でも話せる』など、それぞれが得意分野を持ち、戦隊ヒーロー『ゴレンジャー』のようなチームになって対応すればいい。お客様にしっかりヒアリングして一番相性のいいコンシェルジュをマッチングさせればいいのです」

「これは観光コンテンツにも言えることで、人の共感を誘因するために必要なことは、明確なぶれない軸を持つことです。今の時代、万人受けする幕の内弁当では一つ一つが薄まってしまい、印象に残りません。多少嫌われてもいいけれど、これだけは負けないという、際立つ何かを持ち、熱狂的な特定のファンを獲得することが大切です」

――IT技術の発達や、人工知能(AI)ロボットの普及など、観光分野にもこういったテクノロジーが活用されはじめています。時には技術を活用することも必要ですが、やはり観光では「人」が重要なんですね。

「日本では通訳案内士法が改正され、国家資格の有無に関わらず、報酬を得て外国語でガイドをできるようになりました。ただガイドというと、とにかく『自分の知識を一方的に聞かせる』という人がいますが、今の時代に求められているのは、そうではありません」

「例えばお客様が、予約の時には寿司が食べたいと言っていたとしても、当日やっぱりラーメンが食べたいと言われたら、その要望に応えられる柔軟性を持つ、ということも必要なスキルの一つ。行程を組む力や管理する力、臨機応変な対応、多様性の受け入れ、安全管理などがベースにあり、その上で、言語対応や歴史などの知識が必要になってきます」

「仙台市に設立した株式会社インアウトバウンド仙台・松島では『東北トラベルコンシェルジュ』と命名して人材育成を行っています。コンシェルジュになるためには必要な基準を設けていますが、まだこの基準を満たすレベルの人材は多くありません。外国人観光客が多い首都圏などでは経験豊富な人材も多いですが、東北ではこれから育てていく必要があると感じています」

西谷雷佐
1972年、青森県弘前市生まれ。米ミネソタ州立大学マンケート校を卒業後、地元に戻り観光会社などに勤める。2012年、着地型観光の旅行会社「たびすけ合同会社西谷」を創業。「短命県体験ツアー 青森県がお前をKILL」「津軽ひろさき雪かき検定」など、地域の文化や暮らしぶりに注目したユニークなツアーを企画する。16年、東北の仲間たちと「一般社団法人東北インアウトバウンド連合」を創立し理事長に就任。18年には東北全体へインバウンドを呼び込もうと、仙台市に「株式会社インアウトバウンド仙台・松島」を立ち上げた。
村山慶輔
株式会社やまとごころ代表取締役。1976年、兵庫県生まれ。99年米ウィスコンシン大マディソン校卒。在学中に20カ国以上を旅行したほか、卒業後はインドで半年間のインターンシップも経験した。2000年アクセンチュア入社。地域活性化プロジェクト、グローバルマーケティング戦略などに従事した後、06年退社。07年サイト「やまとごころ」を立ち上げ、12年に同名の会社を設立。インバウンドに特化したコンサルティング事業を手がけている。インバウンドの最新事例を盛り込んだ『インバウンドビジネス入門講座・第3版』を18年4月に出版。

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