居酒屋・スナック巡りに活路 外国人客狙う東北の試み「たびすけ合同会社西谷」西谷代表に聞く(上)

――外国人観光客にとっては言葉や文化のバリアーがあります。日本らしさというテーマで何かユニークな取り組みはありますか。

「『居酒屋ホッピング』『スナックホッピング』などの有料ツアーを提供しています。最初は出張で来る日本人ビジネスマン向けに始めました。夜、知らない街で店に入るのはなかなか勇気がいりますよね。失敗したくないですし。実際に複数のビジネスマンに集まってもらってヒアリングを行い、彼らの要望に沿ったツアーを組み立てました。もう4、5年やっています。店1軒につき30~40分滞在して、3軒ほど回ります。1プレートの郷土料理とお酒が付いていますが、それ以上飲み食いしたい場合はその場で追加の支払いをしてもらいます」

仙台市で行った居酒屋巡りのツアー「居酒屋ホッピング」の様子

「宿と連携して販売しているうちに、外国人からの問い合わせが増え、英語のツアーも開始しました。自社のWEBサイトに載せてまだ数カ月ですが、結構予約が来ています。仙台では台湾からの方が多いのですが、青森はなぜかアメリカ人が多いですね」

観光で稼ぐことは悪いことではない

――スナックや居酒屋など、受け入れる側はどうですか? 拒絶反応を起こしたりしないですか。

「通常スナックのママは外国語をしゃべれないことが多い。最初は言葉の通じないことや文化の違いが心配で、『えーっ』て言われましたけど、一度連れてきてみるとなんてことはないです。同じ人間ですし、相手は日本に興味を持っている好意的な方ですから。まずは試しで、週末の混んでいる時間や常連の来る遅い時間を避け、平日の早い時間に実施しました。結果、稼働率が上がり、収益に結びついたので、良かったと言われることが多かったです」

――スナックや居酒屋など地域の方とは、どのように関係をつくっているのですか。

「日本人って、観光でもうけてはいけないと思っている人が多いように思います。観光はボランティアでやるものだと。しかしそれでは地域が稼げない。継続してやっていける収益が出る仕組みをつくらないと疲弊してしまう。稼ぐことは決して悪いことではありません」

「インバウンドは土日などあまり関係ないので、平日の稼働率を上げる工夫を考える。地域でお金を使ってもらえる接点をつくることは、旅行ガイドの役割。自分たちももうけますが、私たちをハブに、観光客に喜ばれ、店ももうかる、という循環で、信頼関係をつくります。ただ安い料金でたたかれては続きませんから、きちんとペイすることが大切だと思います」

――スナックは日本人でもなかなか入りづらいと思いますが、外国人は日本のスナックを知っているのですか。参加者の反応はどんな感じですか。

「スナックって何? お菓子? っていう方もいますし、事前に調べて来ている方もいます。スナックは日本独自の文化であり、そういうものに興味を持つ外国人は多い。きちんと説明することが大切です。いわゆる若い女性が付く店にも行きますが、最終的には地元で長くやっている、年配のママが営む店へ連れて行くんです。そこでは既成のお菓子なんか出てこなくて、煮付けとか、手作りの郷土料理なんかが出てくる。ベルベット素材の椅子に、昭和歌謡が流れていて。そういうところが一番受けますね。以前、フランス人とスナックへ行ったときは、カラオケで『オー・シャンゼリゼ』とか、何度も歌って盛り上がりました」

――日本のことを知らない外国人の方でも分かるように説明することが大切ですね。異なる文化や価値観を持つ人たちに伝わるようにするために、何か工夫していることはありますか。

「『伝える』と『伝わる』は違うと思うんです。分かりやすい例でいうと、お好み焼きをどう外国人に説明するか。小麦粉と豚肉とキャベツを混ぜて、と説明しても、お好み焼きについて全く知らない彼らにはピンとこない。でも『Japanese pizza or Japanese pancake』と言うと、何か丸く焼いた食べ物だろう、とイメージが湧きやすくなります。カツ丼を説明するときに、外国人が一番知っていそうな日本の味としてテリヤキフレーバーを例に出せば、本当はテリヤキ味でなくても、なんとなく味のイメージができます」

「相手の文化、価値観をこちらもよく学び、その知識レベルに寄り添って説明するという感覚が必要です。このような考え方や発想は、外国人と触れ合って会話する経験の中で身に付けていくもの。異文化交流や海外経験が欠かせないと感じます」

(後編「外国人に3万円の花見 青森の料理や器、手ぶらで満喫」も併せてお読みください)

西谷雷佐
1972年、青森県弘前市生まれ。米ミネソタ州立大学マンケート校を卒業後、地元に戻り観光会社などに勤める。2012年、着地型観光の旅行会社「たびすけ合同会社西谷」を創業。「短命県体験ツアー 青森県がお前をKILL」「津軽ひろさき雪かき検定」など、地域の文化や暮らしぶりに注目したユニークなツアーを企画する。16年、東北の仲間たちと「一般社団法人東北インアウトバウンド連合」を創立し理事長に就任。18年には東北全体へインバウンドを呼び込もうと、仙台市に「株式会社インアウトバウンド仙台・松島」を立ち上げた。
村山慶輔
株式会社やまとごころ代表取締役。1976年、兵庫県生まれ。99年米ウィスコンシン大マディソン校卒。在学中に20カ国以上を旅行したほか、卒業後はインドで半年間のインターンシップも経験した。2000年アクセンチュア入社。地域活性化プロジェクト、グローバルマーケティング戦略などに従事した後、06年退社。07年サイト「やまとごころ」を立ち上げ、12年に同名の会社を設立。インバウンドに特化したコンサルティング事業を手がけている。インバウンドの最新事例を盛り込んだ『インバウンドビジネス入門講座・第3版』を18年4月に出版。