映像からご案内 ぐるり秋の瀬戸内国際芸術祭
春・夏含めて全作品紹介
瀬戸内の島々が舞台となるモダンアートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2019」の秋会期が始まった(11月4日まで)。映像で島の様子を紹介するほか、日本経済新聞社の記者が評価付けした全作品を各島ごとのページにまとめました。
島影が美しく折り重なる大小の島々を巡りつつ、国内外のアーティストがきらめく感性で制作したモダンアートを鑑賞できるとあって、世界的評価の高いイベントだ。春、夏会期の大部分の作品が引き続き鑑賞できることに加え、西側の本島、高見島、粟島、伊吹島の4島で40点以上が新たに追加された(沙弥島は春会期のみの開催)。このレビューを片手に秋の瀬戸内旅行を楽しんでみては。
★★★★★=瀬戸芸を代表する力作
★★★★=見逃せない作品
★★★=見る価値あり
★★=余裕があれば
★=話題作だけど…
<会場一覧。リンクを押すと各島の展示作品評価ページにジャンプします>
(1)直島
・安藤忠雄「桜の迷宮」
世界中から人々が訪れる現代アートの聖地。島内には地中美術館をはじめ、数多くの美術施設がひしめく。路線バスよりレンタル自転車が便利だが、坂道が多いので注意。飲食店や宿泊施設も充実している。高松から高速船で25分、フェリーで50分。
(2)豊島
・森万里子「トムナフーリ」
直島と小豆島の中間に位置する。島中央にそびえる檀山(だんやま)からの湧き水が島全体を潤す。縄文時代から人が住み、江戸時代には瀬戸内海交易や石の産業で栄え、集落には古い街並みが残る。高松から高速船で35分。直島や小豆島からも航路がある。
(3)女木島
・宮永愛子「ヘアサロン壽」
南北4キロ、東西1キロの細長い島。山頂近くに鬼が住むとされた洞窟があり、鬼ケ島伝説の発祥地の一つとされる。海辺の集落は屋根より高い石垣「オオテ」が巡らされ、強い海風を防いだ。半日あればバスと徒歩ですべての作品を見て回れる。高松からフェリーで20分。
(4)男木島
・サラ・ヴェストファル「うちの海 うちの見」
面積1.34平方キロの小さな島。平地に乏しい。急勾配の斜面に石垣を積んで宅地を造り、狭い路地が張り巡らされている。独特の味わいある情景だ。道に迷ったら、坂道を下れば必ず港に出る。作品は集落に集中し、徒歩ですべて見て回れる。高松からフェリーで40分。
(5)小豆島
・ワン・ウェンチー(王文志)「小豆島の恋」
瀬戸内海で2番目に大きな島。土庄など主な港が7つあり、港の間をバスが結ぶ。温暖な気候で、しょうゆやオリーブなど名産品も多い。高松から土庄まで高速船で35分、フェリーで1時間。宇野や神戸、姫路などからも航路がある。レンタカーが便利だが予約は早めに。
(6)大島
・山川冬樹「歩みきたりて」
白砂青松の美しい島。ハンセン病の国立療養所「大島青松園」がある。かつて偏見と差別から、多くの人がこの島に連れてこられた。悲しい歴史に思いを巡らせながら作品を鑑賞したい。今回の瀬戸芸に合わせ、高松からの定期船が就航した。
(7)犬島
採石と銅の精錬で栄えた島。大坂城や江戸城の石垣も一部はここで採石された。花こう岩を切り出した跡と精錬所跡が今も残る。小さな島なので、半日あれば徒歩ですべての作品を見て回れる。直島、豊島、小豆島のほか、岡山の宝伝から航路がある。
(8)沙弥島
春会期のみの開催。かつては沖合4キロに浮かぶ島だったが、1967年の埋め立てで現在は陸続き。JR坂出駅からバスでアクセスできる。小さな漁港がかつて島だったことの面影を残す。美しい白い砂浜が広がり、瀬戸大橋が間近に望める。
(9)高松
瀬戸芸の旅の拠点となる港町。JR高松駅を降りてすぐ、高松港から各島への船が頻繁に出る。会期中はイベントも多く開かれ、街中はアートで彩られる。宿泊施設は多いが早めの予約を。栗林公園や屋島など見どころも多い。街中の移動は市電が便利。
(10)宇野
・淀川テクニック「宇野のチヌ/宇野コチヌ」
岡山側からの各島への出発口。JR宇野駅を降りてすぐ、宇野港から直島や豊島、小豆島、高松などに航路がある。地域はかつて造船などの製造業や鉱業で栄え、現在はノスタルジックな港町の面影を持つ。高松に比べると宿泊施設や飲食店は少ない。
(11)本島
・五十嵐靖晃「そらあみ〈島巡り〉」
戦国時代、塩飽水軍が本拠地を置いた島。江戸時代は物流拠点として栄え、船大工が高い技術を誇った。島内には往時の繁栄を示す街並みが残る。作品は泊・甲生地区と笠島地区に分かれる。島内のバスの本数は少ない。レンタサイクルが便利。
(12)高見島
・中島伽耶子「時のふる家」
蚊取り線香の原料である除虫菊の栽培で栄えた島。港周辺に作品が集中しており、すべて歩いて回ることができる。しかし平地が少なく、急な坂道が続く。体力的にきついので、無理せず余裕を持って回りたい。
(13)粟島
・大小島真木/マユール・ワイェダ「粟島芸術家村」
スクリューのような形状の島。明治期、日本で初めての海員養成学校が置かれた。今も立派な校舎が残り、内部で作品も展示する。ほとんどの作品は港周辺に集中している。
(14)伊吹島
・コンタクト・ゴンゾ「伊吹島ドリフト伝説」
今回の瀬戸芸の会場で、最も西に位置する島。イリコ(煮干しいわし)の産地として有名だ。会期中はたくさんの大漁旗が迎えてくれる。すべての作品を歩いて見て回れるが、急な坂道が多いので注意しよう。
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