思考の巡らせ方を仕事のヒントに
全体は第1部が仕事論、第2部は会社論、第3部は社会論という3部構成になっている。自分自身の「極私的な好き嫌い」を題材に、「好き嫌いと仕事の折り合いをどうつけるのか」「自分の好き嫌いに軸足を置き、自由意思で仕事をするとはどういうことか」を考察する第1部がいちばんビジネス書らしい趣だ。ビジネスパーソンなら、その思考の巡らせ方から仕事の軸を見つけるヒントを発見できるかもしれない。
第2部からは著者の専門分野、競争戦略のありようが学べる。マネジメントに携わる人に参考になりそうだ。第3部からこの先の未来を考える示唆を受け取るのもいい。課題解決型の論理思考とは異なる思考法を提唱するという意味では、前回紹介した佐宗邦威『直観と論理をつなぐ思考法』や、1月に紹介した内田和成『右脳思考』とも相通じる。「内田氏の本もよく動いたし、今はこの本と佐宗氏の本がともに上位に来ている」と、ビジネス書を担当する本店マネジャーの川原敏治さんは話す。先週のランキングでは、楠木氏の本が9位、佐宗氏の本が11位だったという。
店頭1位は『FACTFULNESS』
それでは、先週のベスト5を見ておこう。
(1)儲けない勇気 さわかみ投信の軌跡 | 澤上龍著(幻冬舎) |
(2)社長、あなたの年金、大損してますよ! | 奥野文夫著(WAVE出版) |
(3)仕事に効くオープンダイアローグ | 鈴木隆著(KADOKAWA) |
(4)FACTFULNESS | H・ロスリングほか著(日経BP社) |
(5)父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 | ヤニス・バルファキス著(ダイヤモンド社) |
(八重洲ブックセンター本店、2019年4月7~13日)
1位は、長期投資のカリスマともいわれる澤上篤人氏の軌跡を息子のさわかみ投信現社長がノンフィクション小説に仕立てた本。2位には、刊行から半年ほどたった中小企業社長の年金問題とその対策を書いた本が入った。3位の本は、精神療法から生まれた対話の手法を実践例とともに紹介する内容だ。4位に『FACTFULNESS』。店頭売り上げでは先週もトップだったという。5位には、前々回に紹介したわかりやすく経済の流れと本質を語った翻訳書が入った。
(水柿武志)