「話す」ベンツAクラス 驚いたのは音声操作より走り

MBUXがこれまでの音声操作機能と異なるのは、定型文ではなくクルマと会話するような呼びかけを理解してくれることだ。ちなみにこれはAIによる機能ではないという。車載のソフトウエアとクラウド上のソフトウエアの両方を使い、システムがどちらの対応が最適か判断し、数秒以内に応答及び反応をする(通信が行えない場合は、車両のソフトウエアのみでも対応できるようになっている)。その様子を動画で記録した(経路案内の部分の音量が小さいのはカーナビの音量を下げていたからだ)。

音声入力に関しては、最初に体験した1月末からゴールデンウイークまで、何度か試乗した機会にいろいろと試してみたが、容易に受け付けてくれるものとそうでないものがあった。ある程度ファジーな対応が可能なのだが、そもそも操作できる機能は限定されており、しかもAIではないので、GoogleやAmazonのスマートスピーカーのように賢い対応とはいかない。音声で何ができるかを理解しておかないと、不満が募る機能となってしまいそうだ。ちなみに「ヘルプ」メニューを呼び出すと(音声でも可)、MBUXの音声入力で行える項目が表示される。

MBUXの今後の発展性は、大いに期待できる。ただ現時点の能力に関しては、乗員のアシスタントを担ってくれるが、コンシェルジュではないことをしっかりと認識しておくべきだろう。ちなみに、音声で日時や時間、現在地及び目的地の天気なども教えてくれるのは意外に便利だった。

そんな音声操作の最大のメリットは、ドライバー以外からの操作を可能としたことではないか。後席に子どもと一緒に座っている親も、エアコンの調整ができる。Aクラスに乗った誰もがエアコンやオーディオ、目的地検索などの操作することで、車内にも一体感が生まれるかもしれない。ちなみに、特定の音声コマンドで、「MBUX」がしゃれた返事を返す機能もあるという。家族でそれを探してみるのもAクラスならではの楽しみだろう。

400万という価格をどうみるか

数日にわたり試乗してみて感じたのは、これまでのAクラスと比較して「一皮むけた」ということだった。

走り、機能性、快適性、実用性などクルマに求める欲求を全て一定以上のレベルで超えており、バランスも絶妙。対話できるクルマというのは(ブラッシュアップが必要と感じる面もあるけれど)新しい時代を感じさせてくれる。最も気さくなメルセデスは、オーナーに次世代自動車のあるべき姿を一足先に見せてくれるだろう。

ただ試乗してみた後、興奮して「よし!」と決意を固めたものの、価格を見た時点で我に返る人も多いかもしれない。従来型よりもエントリー価格も上昇しているのだ。

エントリーモデルのA180は328万円。だが、新型の売りであるMBUXのフル機能とSクラス同等の先進安全機能を望む場合、「レーダーセーフティパッケージ」と「ナビゲーションパッケージ」の合計42.9万円のオプション装着が必須となり、諸経費まで含めると400万円の大台にのる。さらに装備の検討を始めると、内容的に充実しているベース価格369万円のA180styleが前提になる可能性も高い。こちらもパッケージオプションの装着が必要なのは同様だ。

それでもAクラスが、最も現実的な価格で、メルセデスのおいしい部分を味わうことができるモデルであることは間違いない。これまでのメルセデス・ベンツは、AクラスやBクラスなどのコンパクトエントリーカーとCクラス以上には明確な境目を感じた。ところが、新型Aクラスは「Aでも良いじゃないか」という思わせるほどの成長を見せてくれたのだ。

大音安弘
1980年生まれ、埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在は自動車ライターとして、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材している。自動車の「今」を分かりやすく伝えられように心がける。
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