昭和ノスタルジーを味わう 都内の正統派ラーメン3店

「中華ソバちゃるめ」の「ワンタン中華ソバ」
「中華ソバちゃるめ」の「ワンタン中華ソバ」

私の個人的な感覚だが、GW前の4月後半から梅雨入り前の5月後半までの1カ月間は過ごしやすい季節で、ラーメンも最も快適に召し上がっていただけるのではないかと思う。

今回は30~50歳代のビジネスパーソン向けに、正統派中華そばを提供する都内の店舗を厳選して御紹介する。

凝りに凝った「今風」のラーメンも相応の魅力があるが、やはり、中高年のラーメン好きにとって、昭和のノスタルジーが漂う1杯には格別な思い入れがあるもの。ご一読いただき、ピンと来た店があれば是非、足を運んでいただきたい。

中華ソバちゃるめ

<丁寧な仕事ぶりで目指すは、世代を超えたスタンダードな1杯>

店舗の所在地は大田区萩中。京急空港線糀谷駅から徒歩3分程度の好立地に、今年2月にオープンしたのが、こちらの「中華ソバちゃるめ」。

糀谷エリアは年配の人やファミリーが数多く居住する土地柄。店主・岩瀬氏は言う。「このような地域性に考慮し、お子様からお年寄りまで、幅広い世代のお客さんに満足していただけるような味づくりを目指しています」

店舗の場所を糀谷に決めた理由は店主の地元だから。屋号の「ちゃるめ」も、地元の友人が名付けた店主のニックネームを採用したという。

現在、同店が提供する麺メニューは「中華ソバ」「塩中華ソバ」など。どちらのメニューもハイクオリティーだが、召し上がっていただきたいのは券売機の1列目を占拠する「中華ソバ」およびそのバリエーションだ。

子供からお年寄りまで訪れる店を目指す

「地元のおじいちゃんやお婆ちゃんが、子や孫を一緒に連れて行きたくなるようなお店にしたいと考えています」と、マニア向けのアプローチ(スープに異素材を使ったり、スープ濃度を極限まで上げたりする方向性)を一蹴する。

スープは豚ゲンコツ・豚背ガラ・鶏ガラを丁寧に炊き上げて創った動物系だしと、羅臼昆布・宗田節・サバ節の滋味を搾り取った魚介だしとを、丼に注ぎ込む際に合わせたもの。提供時に常に新鮮な状態をキープできるよう、動物系だしは1日に2度採るという。清湯スープづくりは特に、各種魚介素材の分量の多寡や風味の善しあしなど、チェックすべき項目が多岐にわたり、心身に及ぼす負担が大きい。それを1日に複数回行うのだ。

スープだけではない。油に香味野菜(ネギ・玉ネギ・ニンニクなど)を溶け込ませ、麺をすすり上げた際に芳香が舞い立つような仕掛けを施すなど、個々のパーツに対する気配りも完璧。

「古臭さを感じさせず、それでいて、お客さんに懐かしさを感じてもらえるような味。そんな1杯を創ることが私の目標です」と断言する岩瀬店主。

舌上でスープを転がせば、各種素材が交互に頭をもたげ存在を主張。複雑玄妙なうま味が生む複層的な味わいに、思わず歓声を上げてしまいそうになる。それでいて、全体的な印象は質実剛健。

伝統と革新が絶妙なあんばいで同居する。2019年に食べるべき正統派中華そばの1杯目は「ちゃるめ」の「中華ソバ」で決まりだ。