back number、11年目の進化 歌う世界観に広がり

日経エンタテインメント!

『ヒロイン』で初めて小林武史をプロデュースに迎えたが、これは作詞作曲を担う清水依与吏の希望だったという。「小林さんはメンバーが憧れたM r.Childrenを手掛けた人でもある。勝負曲でその力を借りつつ、プロデュース術を直に学びたかったのではないか」(藤田氏)。彼らは小林のほかにも島田昌典や蔦谷好位置、亀田誠治らとも曲ごとに組んでいるが、これはロックバンドでは珍しいスタイル。様々なプロデューサーの良さを吸収することで、楽曲制作能力をさらに高めてきた。

また、『ヒロイン』以降は、大型タイアップが切れ目なく続く。15年は「ポカリスエットイオンウォーター」の『SISTER』で甘酸っぱくほろ苦い青春を歌い、「NTTドコモ」の『手紙』では温もりと憧憬を漂わせて涙腺を刺激した。月9ドラマに書き下ろした切ない冬バラード『クリスマスソング』は、配信でミリオンを達成した。

次々にタイアップが舞い込むのは、彼らの真摯な姿勢がある。『オオカミ少女と黒王子』や『銀魂2』を手掛けた映画プロデューサーの松橋真三氏は、映画のメインターゲットである若い世代の支持に加え、その取り組み方も高く評価する。「彼らにタイアップを依頼すると、どんな曲が欲しいか、明確なビジョンがないと答えられない鋭い質問が飛んできます。その上で、映画の世界観やこちらの意図をくみ取った質の高い候補を4~5曲も用意してくれる。そんなバンドはそうはいない」(松橋氏)。

楽曲の多彩さも魅力だという。「ラブソングの印象が強いですが、『銀魂2』では彼らのロックな部分を引き出して欲しいとお願いしました。『銀魂』ファンの多くは、安定の道を外れて夢を追う若者。苦労もいとわず夢を追ったback numberにも熱い魂がある。『大不正解』では、彼らのそんな面も出してくれた」(松橋氏)。

ドームに立つバンドに進化

そしてバンドは、さらなる進化をしている。その兆しが見て取れるのが、身近な世界を歌うことの多かった歌詞だ。映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』の主題歌『瞬き』では、「幸せとは」と歌い出し、普遍的な愛について考察。メンバー自身も30代半ばにさしかかり、彼らにとっての等身大が変わってきたのだろう。歌う世界観の広がりとともに、ファン層もデビュー時の10代、20代の女性中心から40代以上へも広がり、同性からも支持されるバンドになってきた。

より広がりと深みを備えた最新アルバム『MAGIC』(3月27日発売)は、ラブソングの割合がやや減った一方、むき出しの荒々しい感情や日々への問いかけが濃密なメッセージとなった楽曲群が印象深く響く。ドームツアー後、清水は「ドームに立つバンドというのが1つの基準になる」と語った。スケールアップし、ますます多くの人に深く刺さる音楽を届けてくれるに違いない。

(ライター 橘川有子)

[日経エンタテインメント! 2019年4月号の記事を再構成]

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