由美かおる、歌声再び アコーディオン弾き語り新曲
37年ぶりアルバム発売
女優の由美かおるさんが歌手として帰ってきた。8年かけて練習したアコーディオンを引っさげて、37年ぶりにアルバムを出す。アコの弾き語りとなる新曲「すべてにメルシー」のほか、アルバムには新曲が満載だ。芸能生活53年目とは思えない若々しい声とダンスで、往年のファンだけでなく、若い世代も魅了している。
4月13日、都内・渋谷で37年ぶりのアルバム「ジュエルボックス」の発売を記念したミニコンサートが開かれた。会場は満席、追加のパイプ椅子でも間に合わず、立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。年齢層が幅広い。由美さんと同世代のシニアだけでなく、20代、30代も混じっており、女性も多い。水戸黄門を卒業して8年たつが、最近はバラエティー番組にも出演しており、ファン層が広がっている。
10代の女性が70代の祖母と一緒に来場していた。話を聞くと由美さんが男性アイドルグループと共演したバラエティー番組をみて、ファンになったそうだ。30代の男性は「自分の母とそれほど変わらない年齢のはずなのに、なんでこんなに若いのか」と由美さんの魅力を語る。新しいアルバムの表側は往年のアース製薬の蚊取り線香のポーズだ。裏側は水戸黄門でおなじみのシーンにちなんで、シルエットの入浴ショットだ。
由美さんは女優として有名だが、実は歌手としても20曲以上、リリースしており、「いたずらっぽい目」や化粧品のテレビCMでも話題になった「誘惑」などのヒット曲がある。ベネチア、チリ、ブラジルの国際音楽祭にも招待され、現地の言葉で歌って喝采を浴びたこともあった。そんな由美さんが歌手として復帰するきっかけになったのが、アコーディオンだ。
小学生の時、1年間だけ弾いたことがあったが、以後は縁がなかった。水戸黄門を卒業して時間ができたので、パリを旅した時のことだ。石畳を流れるアコの重厚な響きに足を止めた。奏者は背筋を伸ばした女性。堂々と、それでいて軽やかに、にこやかにシャンソンのメロディーを奏でていた。「格好いいなあ、私もやりたい」。帰国してすぐ、由美さんは都内・お茶の水の楽器店に駆け込み、アコを始めた。
取りつかれたように練習した。多い日は10時間くらい。一日でも触れないと不安になるので、出張先にも持参した。道のりは平坦ではなかった。まずアコは重い。12キロある。それを左手で抱え、蛇腹を押したり引いたりしながら、右手で鍵盤を押さえる。蛇腹を動かすタイミングと、鍵盤を弾くタイミングがずれるだけで、思うような音が出ない。足かけ8年、なんとか納得いく音が出せるようになると欲が出た。
「アコのCDを出したい」。せっかくならと新曲も作ってもらった。37年ぶりのアルバム、ジュエルボックスはカラオケを除くと6曲構成で、うち4曲が新曲。掉尾(とうび)を飾る「すべてにメルシー」がアコの弾き語りになる。
由美さんは「平成の最後に、アコも入ったアルバムを出せてよかった。令和の時代は歌手としての仕事を増やしたい」と意欲をみせる。アルバムの曲はそれぞれ1カ月がかり、半年かけて録音した。じっくり歌に向き合ううち、自分の原点に戻ったような気がしたそうだ。自分は歌が好き、歌うことは楽しいと。今後はアコを抱えて全国を回り、コンサートを開くという。夢は年末の紅白歌合戦出場だ。(編集委員 鈴木亮)
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