バブル期の「ダブル仕立てスーツ」に始まった平成の仕事服の潮流は、30年を経て改元の節目を迎えた今、カジュアル化へと大きく転じている。軽さが求められる令和元年のスーツはどうあるべきか。洒脱(しゃだつ)なスーツの着こなしで定評がある伊ブランド、ブルネロクチネリジャパンのブランドメンズアンバサダー、引野実さんに新時代ならではのスーツの楽しみ方を提案してもらった。上下別々の着回し方など意外な提案が次々飛び出した。
――ビジネス街で多勢を占める定番はネイビー(紺)のスーツです。ただ保守的で重厚な印象もあります。軽快感を出すアレンジはできますか。
「みなさんがお持ちのネイビースーツをベースに着こなしを考えていきましょう。まずこちらはバンカーストライプという、英国調のクラシックなストライプです。ダブル仕立てでもあわせが浅く、ボタンを留めずにいてもシングルのような軽さがあります。肩回りの柔らかさも着回しができるかどうかのポイントです。ナチュラルな肩回りは若々しく見え、デニムとも合わせやすいのです」
■パンツはシルエット重視で
――デニムと合わせるのはハードルが高そうです。いかにもスーツの上、という感じが出ませんか。
「大丈夫。近年はスーツがますます軽くなっているのでアレンジに違和感がありません。パンツを履き替えるだけでイメージを一新することができます。ただし、ダブルジャケットの合わせが深すぎたり、肩がかっちりしすぎたりすると、エレガントなジャケットとカジュアルなデニムとのギャップが出すぎるので注意が必要です」
「夏の気候が長く続くようになったという環境変化もありますが、これまで構築的なものとして芯地が厚く作られてきたスーツが、夏でも着られる、軽い仕立てに変わっているのです」