
心理的なメリットだけではない。温室ではすでに、どうしたら宇宙空間で植物が育つかについてもわかってきている。
実験を通じて克服したかった難題のひとつは、どうやって遠隔操作で菜園の世話をするかという問題だった。野菜はすべて「空中栽培」で育てられている。これは、植物を吊るし、根は空中にぶら下げる方法だ。土は使わず、肥料を溶かした水を吹きつけることで栄養を与える。水やりは、温度管理、照明、二酸化炭素濃度の調整とともに、ベルリンにあるドイツ航空宇宙センターから遠隔操作されている。

これまでのところ、このシステムは見事に機能している。またノイマイヤー基地の隊員の反応を見る限り、このような温室があれば宇宙空間での生活は劇的に向上する可能性がある。
「科学者や宇宙飛行士はよく、生野菜や新鮮なサラダがいちばん恋しくなると言います」とホルバート氏は言う。

ノイマイヤー基地は、棚氷の上にあることから、1日に約40センチずつ海に向かって移動している。環境が過酷なこともあって、将来的には閉鎖されることになっている。だがそれまでは、研究者らはここで海氷、オゾンの変化、大気の状況を観測する。そしてもちろん、宇宙探査の名のもとに野菜を育て、サラダを食べ続けるだろう。
次ページでも、人類の次代の夢を現実に変える南極の研究者たちの日常を写真で紹介しよう。