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旅・風景

目指すは火星移住 南極で野菜を育てる世界の研究者

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/4/28

ナショナルジオグラフィック日本版

ノイマイヤー南極基地の温室でキュウリを収穫する、ドイツのアルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所の地球物理学者ヨゼフィーネ・シュターケマン氏(PHOTOGRAPH BY ESTHER HORVATH)

火星に移住する人類が現れるのはいつになるのだろう? 人類が火星で暮らせるよう、火星でも野菜を育てられるよう、日々研究に勤しむ科学者が南極の基地に集まっている。彼らの日常と、研究の内容を写真で紹介したい。

◇  ◇  ◇

国際宇宙ステーション(ISS)を別にすれば、ノイマイヤー基地はこの研究に最も適した場所のひとつだろう。ウェッデル海の東岸、エクストレム棚氷の上にあるこの基地には、飛行機か砕氷船で、それも夏の間の天候がよいときにしか行くことができない。

ノイマイヤー基地は、ドイツのアルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所が運営する3番目の研究施設だ。正式には「ノイマイヤーIII南極基地」という。

ノボ滑走路と呼ばれるロシアの基地に到着し、そりで運ばれる科学者ら。ここでノイマイヤー基地までの飛行機を待つ(PHOTOGRAPH BY ESTHER HORVATH)

「地球上で、宇宙に最も近い場所です」と、1月にここで9日間過ごした写真家のエスター・ホルバート氏は話す。ノイマイヤー基地が南極にある他の研究基地と違うのは、棚氷の上にありながら一年を通じて運営されている唯一の拠点だということだ。越冬隊員として年中ここで生活するのは9人だけ。作業の多くは1つの大きな建物の中で行われ、屋内には休憩時間用の小さなバスケットコートや大画面テレビなども備えられている。

「基本的には、一年を通じて基地の建物を出ることなく生活できます」とホルバート氏は説明する。交代は14カ月ごとで、その間食料が補給されるのは1度だけ。民間人の訪問は許可されていない。隔絶された場所なので、チームには必ず1人の内科兼外科医が含まれる。

ISSでの生活と同様に、ノイマイヤー基地での滞在は、極限の風景が広がる中、狭苦しい場所で同じメンバーと生活や仕事を共にするということだ。外に出るのは、慎重に計画を立てた上でなければならない。「何か(悪いこと)が起こっても、誰も助けに来てくれません」とホルバート氏は言う。

収穫のため温室に向かう地球物理学者のヨゼフィーネ・シュターケマン氏(左)と、チームリーダーのダニエル・シューベルト氏。輸送中に凍らないように、野菜は特別な容器に入れて本館まで運ばなければならない(PHOTOGRAPH BY ESTHER HORVATH)

こうした環境のため、温室がちょっとした潤いを与えてくれる存在になっている。温室は基地本館から400メートルほど離れたところにある。ひどい悪天候でなければ歩いて行って、灰色と白の世界の真ん中で緑の歓迎を受けることができる。

「もうひとつ面白いのは、南極大陸では何の匂いもしないのに、温室に入るとトマト、パプリカ、キュウリなどの野菜の香りがするということです」とホルバート氏。「穏やかな気持ちになり、元気が出ます」

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