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フランスは少子化対策の成果が出た先進国として広く知られている。児童手当や税制優遇など手厚い子育て支援策が一定の効果を発揮した。また、事実婚の増加を受けて婚外子が不利にならない制度を導入したことも「産む」という選択を後押ししたようだ。しかしここ数年は再び出生率が減少傾向に転じている。この例が示すように、成熟社会が少子化に歯止めをかけることは極めて難しい。本書『少子化する世界』はフランス、ドイツなどヨーロッパ4カ国が直面する少子化の現状と子育て支援など様々な対策を細かく分析。日本が取るべき進路の模索を試みている。

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村上芽氏

村上芽氏

著者の村上芽さんは京都大学法学部卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)を経て2003年、日本総合研究所に入社。専門分野は気候変動と金融、SDGs(持続可能な開発目標)、子どもの参加論で、現在は同社で創発戦略センターシニアマネジャーをつとめています。共著に『ビジネスパーソンのためのSDGsの教科書』(日経BP)などがあります。

なぜフランスの出生率は下がっているのか

18年1月、フランスの出生率が3年連続で低下したというニュースが話題になりました。フランスといえば少子化対策の先進国で知られています。しかし、データで出生率の推移をみていくと、実は10年ごろから15~34歳の女性の出生率はなだらかに減少しているのです。一方で、35~49歳の女性の出生率は年々上昇しています。つまり高齢出産は増えているのです。

若い世代ほど子どもを産まなくなっている理由として、筆者は2つの見方を紹介しています。まず子どものいる家庭向けの現金給付が15年に一部カットされたことです。中間層が出産と育児の経済的負担をより大きく感じるようになったのです。もう一つは「女性が教育を受けて安定的な仕事に就くまで子育てを先送りしている」という見方です。

フランスは、少子化対策の優等生といわれてきた。しかし、2017年には1.88と、2002年並みに逆戻りしてしまった。フランスは、2008年の経済危機以降も出生率の高さを誇っていたことから、この結果は「フランスも例外ではなかった」と受け止められている。
(第2章 フランス 優等生であり続けるのか 41ページ)

失業率の上昇で「子どもを持つこと」に消極的

フランスでは若年層の失業率が目立っています。男女の20~24歳の失業率は男性22.9%、女性は21.5%になったと著者は指摘しています。さらに、その失業は1年以内といった短期的なものではなく、長期的な失業が4割を超えてきているのです。

パートタイムで働く女性が置かれた状況に変化が出ていることも影響しています。もともとはワークライフバランスを意識して短時間働きたいと考える既婚女性が多かったのですが、最近では仕事が見つかりにくいためパートタイムを選ばざるを得なくなってきた人も増加しています。それだけ経済的にゆとりのない層が拡大しているようです。

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