便が細い、硬い… 腸の老化度をチェックリストで確認
加齢とともに、目には見えないが、腸も老化が進み、便秘などの不調や病気のリスクが高まっていく。腸の老化を抑えるために必要なのは、毎日の食事を改善することだ。
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便秘は若い女性の不調だと思っていないだろうか。だが実は、加齢によって増えてくる男女共通の不調だ。「国民生活基礎調査」(2013年)によると、65歳以降になると、女性だけでなく、便秘に悩む男性が増えてくるという。その原因に関わるのが、「腸の老化」だ。
「腸管は筋肉層でできていますが、年齢とともに腸管の弾力性が失われてきます。これが中高年の男性の便秘が増える大きな要因です」と、腸の不調に悩む人の診療に当たる松生クリニック院長の松生恒夫さんは説明する。
腸管の弾力性が弱まると、腸の内容物を送り出し、排出する働きが弱まり、便が硬くなったり、排便に時間がかるようになったりする。さらには、腸内細菌叢(そう)も加齢の影響を受け、悪玉菌が勢力を増すようになる。
これらの結果、引き起こされるのが便秘だ。便秘になると、さらに腸内環境が悪化し、便秘も深刻度を増すという悪循環に陥る。
それでも、「たかが便秘」と気にしない人もいるかもしれない。だが、松生さんは「放置してはいけない」と警告する。
「大腸内視鏡検査で発見される大腸がんの部位を調べると、便がたまりやすい、腸の最終地点である直腸やS状結腸が7割を占めます。便秘と大腸がんの因果関係は特定されていませんが、老廃物を腸内に貯留させないようにすることは重要です。
また高齢になると、排便という、それまで「できていた」ことが、「できなくなった」という喪失感も問題となる。精神的な落ち込みが他の不調を呼び、便秘も悪化させる。「便秘などの排便障害は、うつ病を招きやすいから注意しましょう」
では、便秘を悪化させないために何に気を付ければいいのか。
やってはいけないことの一つが、冷たい飲み物をがぶ飲みするなどして腸を冷やすこと。体を冷やすと交感神経が優位になり、副交感神経優位のときに働く腸の動きが鈍くなる。その結果、便秘が悪化するのだ。
便秘解消には食物繊維とばかりに、玄米などの不溶性食物繊維をとり過ぎるのも要注意。「便秘が悪化する人がよくいます」
ところで、便秘が解消できないときには下剤を服用すればいいのだろうか。松生さんはその点に注意を促す。「長年下剤を服用すると、腸管運動が障害され、便意が消失してしまうケースもあります。安易に下剤に頼らず、食生活を改善することを心がけましょう」
次回記事では、腸の老化を防ぐ食物と栄養素について解説する。
(文 柳本操)
松生クリニック院長。医学博士。東京慈恵会医科大学卒業。同大学第三病院内科助手、松島病院大腸肛門病センター診療部長を経て、2004年1月から現職。日本内科学会認定医。『「腸の老化」を止める食事術』(青春出版社)など著書多数。
[日経おとなのOFF2018年11月号記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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