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なぜ高視聴率? 関西発バラエティー番組、逆転の発想

日経エンタテインメント!

2019/4/27

正月におなじみの、テレビ朝日系で放送されている特番『芸能人格付けチェック』。高級品か安物かを見分ける問題に芸能人が挑む企画で、今年の視聴率は19.7%で過去最高を更新した。制作しているのは大阪に本社のある朝日放送テレビ(ABCテレビ)。一般的に“準キー局”と呼ばれることが多い在阪局は、全国放送の枠をいくつか持っており、人気番組も多い。東京のキー局には予算、人数ともに太刀打ちできないハンディを逆手にとった、逆転の発想が高視聴率番組を生み出している。

視聴率はビデオリサーチ関東地区調べ。平均視聴率は編集部調べ。対象期間は18年1月1日~11月11日。日テレの番組がランキングを占めるなか、4位に『ポツンと一軒家』、9位に『プレバト!!』と、日テレ以外では関西局制作の2番組が入った

2018年のバラエティ平均視聴率ランキングトップ10では、日本テレビの番組が8つ入るなか、ABCテレビの『ポツンと一軒家』と、TBS系列となる毎日放送(MBS)の『プレバト!!』の関西勢2番組がランクインした。また、配信の普及によってローカル番組が注目される例も出てきており、TVerで見られる『相席食堂』(ABCテレビ)は、東京のバラエティのヒットメーカーがこぞって「面白い」と評価している。

今なぜ関西局制作の番組人気が追い上げてきているのか。『芸能人格付けチェック』プロデューサーの森和樹氏は、「ローカルで根付いた戦い方と発想が奏功しているのでは」と分析する。「『格付け』は全国ネットの特番で、多少予算がつくので豪華にできていますが、中身はすごくシンプルで、どちらが高いものかを当てるだけ。『ポツンと』だって、ディレクターとカメラマンが山奥に入って、家を探すだけの番組です。東京のテレビ局だと思いつかないと思います」。

『ポツンと一軒家』 日本各地の人里離れた場所に、ポツンと存在する一軒家。そこには、どんな人物が、どんな理由で暮らしているのか(日曜19時58分/テレビ朝日系)
『そんなコト考えた事なかったクイズ! トリニクって何の肉!?』 現在、森氏が担当している番組。昭和世代にとって当たり前のことを、平成生まれの若者たちにクイズ形式で出題(火曜21時/テレビ朝日系)

関西局ではほとんどの人が大阪でキャリアをスタートさせる。予算、人数、芸能プロダクションとの付き合いなど、すべてにおいて、在京キー局のようにはいかない。「関わる人の数は半分以下ですし、予算規模も全然違うんです。そんななかでどう戦うかといったら、企画しかない。タレントさんが呼べないなら、スタッフだけで行ったらいい、みたいな考え方がもともと根付いているので、そこは強みかもしれません」(森氏)。

森氏は東京に来て9年。関西ローカルの番組と全国ネットの番組で、意識の持ち方や作り方に違いはないが、「コンセプトが似ていたり、どこかで見たような番組はやらない、というこだわりは大切にしています」。

■狭くても深く刺さるものを

近年は関西局制作のドラマも輝きを増している。火曜のGP帯(19~23時)に伝統枠を持つ関西テレビ(カンテレ)は別格として、読売テレビ(ytv)の木曜ドラマでは『ブラックスキャンダル』(18年)などの話題作が生まれ、ABCテレビでは18年に「ドラマL」枠が新設された。そして最近はMBSの深夜枠「ドラマイズム」が活気づいている。18年は『わたしに××しなさい!』で小関裕太、『兄友』で横浜流星、『この恋はツミなのか!?』で伊藤健太郎が連ドラ初主演を果たすなど、若手俳優の登竜門的な存在になっているのだ。

08年に深夜のドラマ枠を立ち上げたドラマイズム統括プロデューサーは、「せっかく深夜なのだから、GP帯ではやらない尖った個性的な企画、多少狭くてもいいから深く刺さるものを編成してきました」と話す。コアな視聴者をつかむという狙いのほかに、「俳優に訴えかける優位性」も意識している。「キャスティング力はキー局には圧倒的に及ばない。しかも深夜帯なわけです。それでも役を受けていただくためには、この原作が好きとか、この企画は面白いというものを用意しないと戦えない。そんな側面もあります」。

『賭ケグルイ season2』 河本ほむらと尚村透による同名マンガが原作。浜辺美波主演のギャンブル・エンタテインメント。MBS、TBSなどで放送中(C)2019 河本ほむら・尚村透/SQUARE ENIX・ドラマ「賭ケグルイ2」製作委員会・MBS

枠の転機となったのは、林遣都と桐谷美玲主演の『荒川アンダー ザ ブリッジ』(11年)。飯塚健監督のもと、小栗旬と山田孝之がキャストに加わり、初めて映画化もされた。それ以降、ドラマの放送と映画化がセットになる案件が増え、俳優のモチベーションにもつながるようになったという。16年には枠の浸透のために「ドラマイズム」と名前を付けた。

常に実績のある著名俳優を起用することが難しいため、経験の少ない若手俳優でも、素材が良ければ積極的に起用し続けてきたこともポイントだ。「1年に1度くらいのペースで、学園ドラマジャンルの作品の際にはなるべくオーディションをしています。そうすると、若くて可能性のある人材の一斉リサーチができる。その時は採用とならなくても、後々別作品でオファーすることもけっこうあります。『咲‐Saki‐』(16年)のときの浜辺美波さんもそのようなケースでした。実績がまだない逸材をいかに探せるかが生命線だと思っています」。

キー局に及ばない部分を戦い方で乗り切った結果、追い風が吹き出した。近年のテレビ東京の脚光の浴び方にも通じるものがある。弱さを逆手に取ることが突破口となるケースは今後も増えそうだ。

※視聴率はビデオリサーチ関東地区調べ

(ライター 内藤悦子)

[日経エンタテインメント! 2019年4月号の記事を再構成]

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