排尿時間が30秒を超えたら、おしっこ年齢の曲がり角ストレス解消のルール(8)

日経Gooday

――堀江医師「体の変化で気にしてほしいのは、『排尿時間』『スッキリ感』『勢い』ですね」

【1】排尿時間

――堀江医師「排尿時間は、『おしっこ年齢』のバロメーターの一つです。排尿する時間が30秒を超えるようなら、『おしっこ年齢は老人』ということですね」

老人とは、衝撃的だ。そういえば、考え事をしていてトイレの滞在時間が長くなることはあっても、排尿する時間を気にすることはほとんどない。

体重が3キロ以上の哺乳類のほとんどは、排尿時間が約21秒という報告がある。写真はイメージ=(c)damedeeso-123RF

ところが、かのノーベル賞のパロディーで有名な「イグノーベル賞」で、排尿時間の研究が発表されている。「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられるこの賞の2015年物理学賞を受賞したのが米国の研究チーム。「体重が3キロ以上の哺乳類なら、ほとんどの動物が排尿にかかる時間は約21秒である」という研究だ。

実際、堀江医師と旭川医科大学の松本成史教授の研究チームが21歳から94歳の男女に対して行った調査でも、排尿時間は男性20~40代、女性20~60代で21秒前後だったという。

――堀江医師「健康的な排尿時間は21秒、長くて30秒以内が目安です。30秒以上かかるようなら、膀胱の機能が低下しているサイン。70歳以上の高齢者か、前立腺肥大症、高血圧、動脈硬化がある可能性があります」

「今日は特に排尿に時間がかかるなぁ」と思ったら、病院に行ったほうがよいのだろうか。

――堀江医師「いえいえ、体調や飲んだ水分の量によっては時間が長くなる時もありますから、排尿時間が1回長くなったからといって神経質になる必要はありません。そもそも、排尿時間が急に長くなるということはありません。加齢とともに少しずつ長くなります。でも、目立って排尿時間が長くなってきたように感じたら、加齢の変化が膀胱や前立腺に起こっていると思ったほうがよいでしょう」

【2】スッキリ感

排尿の「スッキリ感」というのは、どういうことだろう?

――堀江医師「尿が膀胱に十分にためられ、スムーズに出し切ることができれば、スッキリ感を得られます。これが、理想的な感じ方。いわば、『ストレスのない快尿』です。逆に、尿がチョロチョロとしか出ず、出し切れなければ、残尿感につながってしまうのです」

どういう場合に、排尿し切れず「残尿感」が生じるのだろうか?

――堀江医師「加齢とともに膀胱の血流は減少し、膀胱の筋肉はしなやかさを失い硬くなります。伸縮性の落ちた膀胱は、いわばゴム風船から紙風船に変化したようなもの。尿を押し出す膀胱の筋力が衰え、しなやかさを失うと、貯水袋である膀胱から尿を出し切るのに時間がかかります。しかも、尿が出切らないために『常にトイレに行きたい感じ』になるのです」

つまり、排尿時間が長くなるだけでなく、常に残尿感があるのも、「おしっこ年齢」が上がったサインということなのだろうか?

――堀江医師「そうですね。高齢男性の場合は前立腺肥大症が原因の場合もあります」

「前立腺」とは、膀胱のすぐ下に位置し尿道を包み込むような形をした男性特有の臓器だ。健康な状態では尿が出る時だけゆるんで尿を通しやすくしている。それが肥大化し、膀胱や尿道が圧迫されるようになってしまうのが、「前立腺肥大症」だ。尿の勢いが落ちる、排尿が遅くなる、キレが悪い、といった尿トラブルを引き起こすのだという。

前立腺は尿道を包み込むようについている(左)。これが年とともに肥大すると(右)、膀胱や尿道を圧迫し、尿の勢いの低下や、キレの悪さなどの原因となる。原図(c)designua-123RF

――堀江医師「前立腺肥大症も膀胱が硬くなることも、『老化』からくるもの。『残尿感』が出てきたら、『老化』が始まったかもしれないと、注意してください」

【3】勢い

排尿する際の「勢い」も気にしたほうがよいのだろうか?

――堀江医師「そうです。『排尿時の勢い』は、『排尿時間』『スッキリ感』と密接に関係しています。常にチョロチョロとしか出なくなってきたら、排尿時間も長くなりますし、残尿感がありスッキリとはしません。勢いがなくなってきたと感じた際にも、『おしっこ年齢が上がったサイン』と気にしたほうがよいかもしれませんね」

「年をとったからトイレが近くて」と嘆く声もよく耳にする。

――堀江医師「そうですね。これも、老化で膀胱が硬くなったことによります」

尿の貯水タンクである膀胱の平均的な容量は300~400ミリリットル。150~200ミリリットル尿がたまると、尿意が起こるメカニズムになっているようだ。

――堀江医師「150ミリリットルくらいでトイレに行きたくなっても、容量近くの250ミリリットルまではガマンできます。健康で若い膀胱でしたらトイレに行きたくなってもしばらく我慢ができるのは、この余裕があるからです」

では、「トイレが近くなる」のはどうしてだろうか?

――堀江医師「老化で膀胱のしなやかさが失われると、ためられる尿の容量も減ってしまいます。同時に我慢できる容量も減るので、しょっちゅうトイレに行きたくなる『頻尿』を引き起こすのです」

かくいう私は緑茶好きのせいか、トイレに行く回数が多い気がする。これも膀胱の老化なのだろうか?

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