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利益率アップが見込めるあの業界を見る目(苦瓜達郎) 三井住友DSアセットマネジメントシニア・ファンドマネージャー

2019/4/16

写真はイメージ=PIXTA
「環境問題で肩身の狭いプラスチック製品メーカーだが、日本企業の競争力は高い」

ファンドマネジャーとしての豊富な取材経験を基に中小型株の銘柄選びの視点をお伝えするシリーズの第3弾は化学セクター、なかでも特にプラスチック加工業界を取り上げたいと思います。証券コードでは、4200番台の企業の大半と7800番台、7900番台の一部が相当します。

プラスチック製品は環境保護の観点から肩身が狭い昨今ですが、日本の上場企業が主力とする製品は高い技術を生かした特殊製品が多く、そう簡単に他素材へ切り替えられるものではありません。金属や窯業製品に比べると軽量という利点は大きく、例えば自動車部品の素材として使われる場合、環境への負荷を減らす貢献をしているとも言えます。

一口にプラスチック加工メーカーと言っても、ビジネスモデル面から2つに大別して考える必要があります。(1)自動車や家電、OA機器等の部品や特定の顧客向けの容器など、特注での製造を主力とする企業(2)フィルムや板、管、規格化された容器等々、特定顧客に依存しない製品を幅広く扱う企業――の2つです。(1)と(2)では、収益構造がかなり異なるのです。

■利幅は厳しいが変動は小さい特定顧客向け

前回の自動車部品編でも書きましたが、(1)に分類される企業は「勝ち馬」に乗れば売上高は大きく伸ばしやすい半面、利益面では高い利益率の確保は容易ではありません。価格交渉の際、顧客が原料コストや工賃をかなり正確に計算できるため、よほど特殊な加工が必要な場合を除けば、大きな利幅の設定が難しいからです。もっとも、原料価格の上昇時には自動的に製品価格も見直される契約を結ぶことが多いので、プラスチック価格の変動リスクは比較的小さいと言えます。

原料高騰時には利幅圧縮のリスクを負う一般向け

特定顧客向けが主力でないメーカーは、同業他社との競争状況を勘案しつつ、自由な価格の設定が可能です。市場シェアが高かったり、製品の付加価値が多くの顧客に認められている場合には、強気の価格設定が通ることもあります。ただし、日本の商慣行上、価格改定に関しては企業間の交渉が必要。原料価格が上昇する局面では製品価格への転嫁が遅れ、利幅が圧縮されるリスクを負っています。

過去数年の世界景気の拡大局面で、プラスチック価格は上昇を続け、特定顧客に依存しない製品を主力とする加工メーカーの利幅は縮んでいました。その局面が変わりつつあります。昨年度後半から原料価格の上昇が一服する半面、遅れていた製品価格への転嫁が実現したため、利幅は回復傾向です。しかも原料によってはかなり下落しているものもあり、仕入から出荷までのタイムラグを考慮すると、今後さらに利益率の上昇が期待できる企業も少なくありません。

■中長期ではニッチ分野が有望

より中期的な利益率の水準は同業他社との競争状況に左右されます。その意味では、市場規模が大きく汎用性の高いものより、ニッチ分野に属するものに利益率の高い製品が多いように感じます。

例えば管工機材であれば、管そのものより継手やバルブといった製品の方が一般的に利益率は高くなります。また、店舗内装用や住宅リフォーム用の建材を生産する企業の中には、独自の流通網を築くことによって値崩れを防ぎ、高い利益率を実現している例もあります。

ニッチ分野の方が儲けやすい、ということは、小型株投資に向いた業種であると言えるでしょう。個々の企業の儲ける仕組みをきちんと理解できれば、優良な投資先候補を増やすことができるでしょう。また、現在のような世界的な景気鈍化局面において利幅の拡大が期待できるということは、投資家にとっては非常にありがたい存在でもあります。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムで、原則火曜日掲載です。
苦瓜達郎
三井住友DSアセットマネジメントシニア・ファンドマネージャー。1968年生まれ。東京大学経済学部卒業後、91年大和総研入社。アナリストとして窯業やサービス業の担当を経て中小型株を担当。2002年大和住銀投信投資顧問入社。中小型株ファンドの運用に携わる。
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