史上最大のティラノサウルス ゾウより重い約9トン

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/4/22

現生のさまざまな動物の研究から、大腿骨が太いほど、支える体重も大きい傾向にあることがわかっている。スコッティの大腿骨は直径20センチほどもあり、2本の脚で8.85トン以上を支えていたことを意味する。誤差は前後2トンずつといったところだろう。米フィールド自然史博物館に展示されている大型のTレックス、スーの全身骨格に同様の手法を用いた場合、スコッティより約400キロ軽い計算になる。

ただし、この手法は確実ではない。まず、骨格はただ体重を支えるだけでなく、運動の力にも耐えなければならない。アロサウルスなど、ほかの大型肉食恐竜と比べ、ティラノサウルスは動きが速く機敏だったという証拠もある。ティラノサウルスの脚の骨が走りのストレスに耐えられるよう過剰に進化していたなら、パーソンズ氏らがスコッティの体重を大きく見積もっている可能性もある。

また、体重は大きさの一つの指標にすぎず、すべての肉食恐竜が同じ体形だったわけではない。ティラノサウルス類はずんぐりしているが、もっと細長い肉食恐竜もいた。なかには同じTレックスでも体形はさまざまだったと考える研究者もおり、実際、「細身」の標本もいくつかある。

骨太=巨大とは限らない?

骨の太さだけではわからないという好例が、スピノサウルスだ。スピノサウルスは半水生の恐竜で、約1億年前、現在の北アフリカに生息していた。口から尾の先端までが約15メートルで、体長はTレックスを超えている。しかし、大腿骨の太さから体重を推測すると、わずか1.6トン程度という計算になる。

実際はほぼ間違いなく、スピノサウルスはもっと重かったはずだ。ほとんどの時間を水中で過ごしていたと考えられているため、後ろ脚が小さかったのだろう。さらに、スピノサウルスの骨はほかの肉食恐竜よりはるかに密度が高い。ペンギンのような現生の半水生の鳥(恐竜の子孫)も同じ特徴を持ち、浮力を抑える助けになっている。

「スピノサウルスは型破りな存在です」とイブラヒム氏は話す。氏はナショナル ジオグラフィックの助成金を受け、スピノサウルスの化石を発見したことがある。「独自の生態と環境に特化した獣脚類で、恐竜というより川のモンスターです」

パーソンズ氏は引き続き陸に目を向け、スコッティの化石を詳しく調べる予定だ。目の周囲のドラマチックな張り出しと頭蓋骨の左右に生えた「角」から始めることにしている。「体の大きさが話題になっていますが、私のお気に入りはもっと小さなところ、奇妙な細部です」

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年3月28日付]

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