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動くかタンス預金50兆円 新紙幣、家計にどう影響

2019/4/12

新紙幣の発行を発表する麻生財務相(9日午前、財務省)

Q.新しいお札が2024年度に20年ぶりに発行されるそうですね。私たちの家計や暮らしはどんな影響を受けるのか気になります。今使っているお札の扱いを含めて教えて下さい。

A.「詐欺にご注意下さい」。財務省と日銀は9日、新紙幣発行を発表すると同時に注意を促す一文をホームページ上に掲載しました。新紙幣のニュースに便乗した詐欺の横行が予想されるためです。

今のお札が使えなくなる前にお宅にお邪魔して引き取ってあげましょう――。高齢者らを狙った手口が考えられますが、これは偽りです。

日銀によると一度発行された紙幣は「法令に基づく特別な措置がとられない限り通用力を失うことはありません」。実際、現在22種類もの紙幣が有効でうち18種類はすでに発行が停止された紙幣です。

1986年に発行が終わった「聖徳太子」の一万円札や「伊藤博文」の千円札、遡ると「二宮尊徳」の一円札(停止58年)や「板垣退助」の百円札(同74年)なども法律上は額面通り使えます。

詐欺の横行と並んで予想されるのが紙幣自体の「売買」です。希少性が増すとみられる発行年や肖像のお札を、額面を上回る価格でインターネットを通じて売り買いする人が現れるかもしれません。

「タンス預金」への影響も考えられます。家の金庫などに保管されている紙幣は国全体で推定約50兆円です。眠るお金の目を覚まし、消費や投資に向かわせる副次効果を政府は狙っているようです。

例えば新紙幣になると駅の券売機や自動販売機などが改修され、古い紙幣は投入してもはじかれる可能性があります。その前に消費に回そうと考える人は出てきそうです。

元税務署員のある税理士が注目するのは「脱税目的のタンス預金をあぶり出す効果」です。日本では相続課税から逃れようと「1千万円規模の現金を銀行から引き出して一万円の札束で家に隠しておく例が珍しくない」そうです。

その中には「焦って新紙幣に交換しようと銀行に持ち込む人がいる」かもしれません。現実には前述のとおり古い紙幣は有効だし、税務署は口座記録などから脱税を見抜きますが、現金ならばれないという迷信が根強いようです。

政府が推進するキャッシュレス決済化はどうでしょう。目新しい紙幣の登場は現金志向への後戻りにつながる気がしますが、「むしろ間接的に非現金決済化を後押しする」と決済サービスコンサルティング(東京・千代田)代表の宮居雅宣さんは読みます。

理由は現金流通を支えるインフラのコストです。国全体の費用は銀行を中心に年8兆円との試算があります。新紙幣に対応するため新たにATMなどを改修しなければならず「費用負担を抑えるため今からキャッシュレス化対応を急がざるをえない」といいます。野村証券チーフエコノミストの美和卓さんは「非現金決済が普及すればお札の需要が減ってタンス預金が減る可能性がある」と話します。

[日本経済新聞朝刊2019年4月13日付]

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