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仕事でも「バトン渡し」の巧拙が勝負を分けかねない。写真はイメージ=PIXTA

仕事でも「バトン渡し」の巧拙が勝負を分けかねない。写真はイメージ=PIXTA

春は異動や担当替えが多く、必然的に前任者からの業務の引き継ぎも増える。だが、引き継ぎがスムーズに進まずトラブルに至るケースは珍しくない。『引継ぎ』(プレジデント社)を書いた宗澤岳史氏は「引き継ぎは業務を見直す絶好のチャンス」と説く。失敗しない段取りや、引き継ぎを機に取り組むべき改善ポイントを教わった。

引き継ぎに身が入らない理由

引き継ぎだけをテーマにした本格的なビジネス書は国内ではほとんど見当たらない。宗澤氏はこの「空白域」に気づいて執筆の準備を始めた。以前から気になっていたテーマだったという。「これほど頻繁にビジネスの現場で起こっている『業務』なのに、きちんと業務として位置づけられていない。日本経済全体の損失が大きい」と、引き継ぎそこないの悪影響を指摘する。

前任者が丁寧な引き継ぎを怠りがちになるのには理由がある。既に次の職場やミッションが決まっているから、気もそぞろになってしまうのだ。「前任者の気持ちは新たな辞令をもらった瞬間から次の居場所へ移ってしまっている。引き継ぎに身が入りにくい」(宗澤氏)

人事考課の面でも引き継ぎは軽んじられてきた。業績の評価ポイントに「引き継ぎを着実にこなした」という独立項目が用意されている企業はあまりないのではなかろうか。異動や退職のタイミングと重なる事情もあって、引き継ぎは成績としてカウントしにくい。宗澤氏は「そもそも引き継ぎを重要な業務と位置づけていないケースが大半。評価されないのだから、きちんとこなすモチベーションも高まらない」と指摘する。

海外に目を転じると、引き継ぎの景色はがらりと変わってくる。「そもそも引き継ぐという意識が乏しい。転職が当たり前の米国では、ある日いきなり前任者がオフィスを去ってしまい、引き継ぎが事実上ゼロというケースも起こり得る」と宗澤氏はいう。日本流の引き継ぎにマッチする英語表現すら見当たらないそうだ。欧米では企業同士の約束事としての契約の存在が大きい。そして契約自体にビジネスのスキームをきちんと明文化して継続させる機能がある。それゆえ、後任者が誰であろうと業務が停滞する事態は起こりにくい。

やっかいな「抱え込み屋」の存在

日本で引き継ぎが軽視されてきた背景には、終身雇用制度も関係しているようだ。異動した前任者も社内で居場所が変わるだけであり連絡がつきやすいから、後任担当者は困った時点で尋ねれば済んだ。しかし、最近は人材の流動性が高まり、前任者が退職するケースが増えてきた。「これまでのように雑な引き継ぎでは、後任が立ち往生しかねない」(宗澤氏)

円滑な引き継ぎを難しくしてしまうのは、前任者の属人的な仕事ぶりだ。入り組んだローカルルールや奇妙な約束事、情実的な人間関係などを絡ませて取引先との間柄をブラックボックス化してしまう人が珍しくない。こうしたしがらみは、後任担当者からは理解しにくく、継承も難しい。「属人化して抱え込むことによって自分の存在価値をアピールしたがる傾向の働き手が、状況をややこしくする」と、宗澤氏はやっかいな「抱え込み屋」の存在を見抜く。

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