春の陽光まぶしい季節となりましたが、あなたの心と体はお元気でしょうか? こんにちは、精神科医・産業医の奥田弘美です。
ストレスが高まったときは、スペシャルなケアが必要
さて、どんな人でも仕事をしていると何かと小さなストレスは日々感じるもの。きっと読者の皆さんも、デイリーなストレスに対する解消法は、なんとなく自分なりに身に付けていらっしゃることと思います。
しかし長い仕事人生の中では、時にぐぐっとストレスが高まってしまうことがあります。例えば「関わっているプロジェクトにトラブルが発生した」「大きな失敗をしてしまい、周りに迷惑をかけた」「職場の人間関係に問題が生じた」「やりたくない超苦手な案件にアサインされてしまった」など……。
こうした普段より大きなストレス要因にアタックされると、心身に通常とは違う負荷がかかるため、普段のストレス解消法とは別のスペシャルなケアが必要になります。なぜなら高いストレス状態に陥っているときには、自律神経の交感神経系が過活動になり副腎からも抗ストレスホルモンが分泌されるため、心身のバランスが崩れやすくなるからです。
ストレスの渦中にいるときには気づきにくいのですが、高ストレス状態になると、例えば次のような症状が出始めることがあります。
●寝つきが悪くなる、夜中に目覚める、夢を多く見るなど睡眠が浅く不安定になる
●筋肉緊張が高まり、頭痛・肩こり・腰痛などが普段より悪化する
●イライラしやすくなったり被害妄想的になったりと精神的に不安定になる
●倦怠感がとれにくくなり、心がスッキリ晴れなくなる
●時間に追われる感じが強くなり、ソワソワして気持ちが落ち着かなくなる
●カフェインや甘い物、アルコールなどの刺激物がやたらと欲しくなる
●便秘や下痢、胃もたれ、腹痛などの胃腸症状や、肌荒れ、湿疹などの皮膚トラブル、体がふらつくようなめまい感が出現する
これらはストレスによって自律神経のバランスが悪くなり出したときに発生しやすい症状で、いわゆる「過緊張症状」と呼ばれたりします。こうした過緊張症状に気づかず、そのまま放っておくのは非常に危険です。放置した結果、うつ病やパニック障害といったメンタル不調、胃潰瘍や逆流性食道炎、過敏性腸症候群、メニエール病といったストレス性の身体疾患が発生することも少なくありません。
そこで、高ストレス状態になっていると感じたときにしていただきたい行動を4つに分けて、お伝えしたいと思います。
(1)睡眠をできるだけ長くとる

ストレスが高まっているときに、最も必要なのは睡眠です。睡眠不足の状態では、どんなストレスケア法もリラクセーション法も効果はないといっても過言ではありません。最低でも6時間、できれば7時間以上の連続した睡眠時間を死守しましょう。
夜に6時間以上連続して眠ると、その間にレム睡眠とノンレム睡眠のセットが3~5回繰り返され、日中に受けた脳と体のダメージ回復や記憶や感情の整理が行われます。日中のストレスによって疲労した体と脳を睡眠中にしっかりメンテナンスすることで、翌日に気力や体力がよみがえり、高ストレスに立ち向かうことができるのです。トラブル案件などのために残業を余儀なくされ、十分な睡眠時間の確保が毎日は難しい状態であっても、できるだけ週の半ばに1日と週末などの休日だけは「しっかりと眠る日」を捻出するようにしてください。
睡眠不足が続けば続くほど睡眠負債が蓄積し、どんどん心身に悪影響が及んでいきます。睡眠負債がたまった脳では、トラブルを解決するためのアイデアも、タフな状況を切り抜けるための機転や知恵も生まれません。そればかりか作業効率の低下やミスの発生を招きやすくなったり、精神状態が不安定になるため人間関係も悪化しやすくなったりし、さらにストレスを上乗せする結果につながります。