自分しか語れないメッセージは プレゼンに勝つ第一歩一橋大学名誉教授 石倉洋子(4)

苦手意識が働くので、グループでディスカッションや作業をしても、プレゼンテーションをほかの人に任せて、自分は避けてしまうという人も多いようです。

たとえば私が5年以上、毎月やっていた「ダボスの経験を東京で」では、7つか8つある小グループごとにディスカッション・リーダーとレポートバックが必要なので、多くの人にこの役割を経験してもらうことができます。しかし、グループの中には譲り合ってなかなかレポートする人がいない、ということもあります。

リスクがないこうした場で試してみることが、プレゼンテーションの練習に最適と思うのですが、そう思って試してみる人はごく少数のようです。

誰にでも怖いことはある

「日本人はプレゼンテーションが苦手だけれど、米国人なら誰でもプレゼンテーションは大好きで得意だろう」。そんなふうに思い込んでしまいがちですが、実は米国人でも、人前で話すことが一番恐ろしいことだというニュースを聞いたことがあります(調査結果もあるようです)。

実際、「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」という毎年行われる大きなエレクトロニクスのショーで、ハリウッドの有名な監督が新商品の紹介に詰まってしまい、結局スピーチをやめてしまったということが話題になっていました。

私自身、米国に留学していた時のスピーチのクラスで、丸暗記していたはずなのにあがってしまって言葉が出なくなり、メモを見た経験があります。その後、言葉が出なくなったという経験はあまりないですが、プレゼンテーションで最後に言うべき一番のメッセージを忘れてしまったり。人の名前や詳細の数字を忘れてしまったりすることは今でもかなりあります。

また、私にはほとんど経験のない官僚の偉い人の朝食会に招かれて、いつになく緊張してしまい、話はしたけれど支離滅裂だったということがあります。

いまだにうまくいかないこともありますが、場数を踏み、修羅場をくぐるにつれ、怖いけど、何とかする! という自信はついてきます。

プレゼンテーションは「あなた」のもの

プレゼンテーションを良いものにするためのヒントとして、聴衆をよく知ること、印象に残るメッセージやストーリーを語ること、聴衆と関連づけることが必要だなどと、いろいろ提案されています。

それはもっともだと思うのですが、私が一番言いたいのは、プレゼンテーションは「あなた」のものである、ということです。

つまり、誰にでも合う「最高のプレゼンテーション」というものは存在しないのです。プレゼンテーションは、その場、その時、聴衆、そしてプレゼンテーションをするあなたという一度限りの「組み合わせ」によるものです。その中で最も大切なのは、「あなた」なのです。

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