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転ばぬ先の不動産学

賃貸マンション投資 「本当の手取り」を見極めるには 不動産コンサルタント 田中歩

2019/4/17

減価償却は建築費を耐用年数に応じて少しずつ経費化する仕組みですが、設備については建物躯体(くたい)よりも耐用年数が短く、一般に15年程度で償却が終わります。このため、16年目からは手元残金から引き算できる金額が減り、税額が上がります。

■時間の経過とともに税引き後利益が減る

以上から、賃貸事業はそもそも時間の経過とともに税引き後利益が減っていく構造になっていることがわかると思います。

今回例示した事業収支のイメージについて、空室率を8.3%、賃料下落率を年0.5%、税率を一律30%として考えると、以下の通り16年目に税引き後の手取り額は大幅減となり、その後赤字に転落します。

これ以外にも、大規模修繕費用がかかること、金利がずっと一定のままというわけにはいかない可能性があることなども加味すると、税引き後の手取り額はより厳しい結果となるおそれがあるわけです。

■3つのポイントを加味した提案の要求を

事業収支に税金を記載しない理由は、法人でも個人でも、ほかに所得がある場合は税率が変わるため設定しにくいことや、具体的事案における税金の計算は税理士や公認会計士でないと計算してはならないルールがあるためだと思われます。しかし、税金を計算して税引き後利益を算出してしまうと収支が悪化してしまい、営業面からすると好ましくない面もあるかもしれません。

とはいえ、こうした提案を受ける以上、空室率と賃料の下落率を想定した賃料収入、適正な運営支出、税引き後の手取り額を見たいと建築会社にお願いしてもよいと思います。賃貸事業収支がこういった構造になっていることをきちんと説明してくれる会社であれば、この構造に対してどのように対応していくべきかということまで相談に乗ってくれるのではないかと思います。

賃貸物件が供給過多といわれる中では、そこまで考えたうえで賃貸事業を実施すべきなのではないかと筆者は思います。

田中歩
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。

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