筆者は、建築会社から賃貸マンションの建築を提案されている人の相談に乗ることが多々あります。目にする提案書は、多少の違いはあれ、どれも同じような内容になっていることが少なくありません。提案のメインとなる事業収支表(収入、支出、利益が時系列で記載された表)は、当然ながら一定の利益が得られるかのように見えることが多いものです。ただし。これが本当の姿を表しているとは限りません。
よくある事業収支表のイメージ
まず、よくある事業収支表のイメージを見てみましょう。
事業収支表を見慣れていない人だと、何が何だかわからないという人も多いと思います。一番下にある「手元残金」を見る限り、それなりにリターンがありそうだと思えるでしょう。実際、3億円の総事業費に対する純収益は5%で、自己資金5000万円に対する手元残金は9%を超えています。
しかし、この表はこの賃貸事業の本当の姿を表しているわけではないのです。これを見抜くポイントは、「賃料収入」「運営支出」「税引き後利益」の3点です。
「30年間満室で家賃不変」はあり得ない
まず賃料収入です。事業収支表では30年間、一定となっています。ずっと賃料収入が下がらないことは一般には考えられません。
筆者が構造別の築年数の経過によってどの程度の賃料下落が生じるか、調査をいくつかの地域で実施したところ、都区部で年間0.5~0.7%、郊外だと1%程度となりました。需給バランスの変化といった市場環境の変化は加味していないので、もっと下落率が大きくなる可能性もあります。