ただ似合うだけではダメ 色味や素材で「内面」演出
セルフブランディングのためのコンセプトづくり(下)
こんにちは。 前回のコンセプトづくり(上)でご自身の分析をされましたか? まだの方は、ご自身が何を大切にし、どのようなイメージを周りに伝えたいのかをよろしければ前回の最後部のチェックリストから書き出してみてください。
今回は、以前モデルとして登場頂いた医師の五藤良将(ごとうよしまさ)氏(40歳、身長175cm)を分析してみたいと思います。
■文章化することでどんな演出が必要か明確に
印象分析で五藤さんは「人情味あふれる優しさ」と「エネルギッシュに実行する」を選び、重要ワードからは、優先順位1番に信頼感、2番目に責任感、3番目に包容力を選びました。これからクリニックの立ち上げをすすめることを踏まえ、「人情味溢れる優しい笑顔でエネルギッシュ! 多くの方から支持を得る医師」というコンセプトを作成しました。文章化することでどのような演出を必要とするかが明確になってきました。それでは、その演出をファッションの中にどうやって入れていくと効果的かについて、ご説明します。
五藤さんの顔型はベース型でやや面長(顔幅が狭く、下唇から顎までの長さが長い)、体型はスリム体型(細マッチョ)で、なで肩です。
Beforeの画像を見てみましょう。なで肩は肩パットや裄綿(ゆきわた)により調整されていますが、五藤さんはお顔立ちが若々しく、目元が人懐っこく可愛らしいので実際の年齢よりもお若く見えることとスーツの選び方により、ひょろりとした感じに痩せて見えるため、頼りない神経質そうな印象を与えてしまいかねません。
さて、ここでおさらい。
スリムで背の高い人にお似合いのジャケット=シングル/ダブルどちらでもOK。ジャケットの着丈は、やや短め・3B(ボタン)。色はミディアムグレー等の薄めの色、チャコールグレー等、ストライプ柄(幅狭)ラペルの幅は細めで、ゴージラインは普通、ベントは、サイドベンツ。ワイシャツの襟は、レギュラータイプ、ネクタイはあまり濃い色ではなく、中間色をチョイス。また、結び方はシングルノット……でしたね。
■柔らか仕立てで「人情味あふれる優しさ」演出
というわけで、Afterの画像をご覧ください。五藤さんに三つ揃えのスーツをお奨めしました。ナポリスタイルのスーツなので、ブリティッシュスタイルに見られるようなかっちりとしたショルダーラインのように肩を強調しない柔らかな仕立てのため、五藤さんのなで肩をカバーするタイプではありませんが、「人情味あふれる優しさ」を演出しています。
実際に仕立てる際は、少しだけ肩に裄綿を入れて肩をカバー調整することをお奨めしました。ジャケットの丈は、短いとすこし軽い印象になるため、クラシックスタイルの通常丈にして落ち着いた雰囲気を出しています。二つボタンのジャケットですが、ベストの合わせの位置が高いため、目線が上の方に来る(三つボタンと同じ効果)ことで、スラリとした精悍(せいかん)な印象になりました。
また、ベストを着用することで、より胸板や胴回りに厚みが出たため、信頼感や包容力に繋がる印象を感じさせます。ワイシャツは細いストライプで襟の部分が浮かないように襟にストラップが付いているため、首回りもすっきりしていることで責任感及び、顔を強調することで「エネルギッシュに実行する」イメージをアピールしています。ネクタイも少し濃いめではありますが、スーツと同色にしてシックな印象に仕上がりました。
■ファッションはあなたの履歴書であり企画書
いかがでしょうか? ただ、似合うからだけでも格好良く見えるからという外面だけでなく、どのように見せたいか、どのようになりたいかを決めてからブランディングコンセプトに基づいた演出を論理的に自身のファッションに効果的に取り入れていけばよいのかを考える必要があります。
私は、クライアントの皆様に「ファッションはあなたの履歴書であり、企画書である」とお伝えしています。これに「立居振る舞い」もプラスされると、より効果的に出世の道が開けていくのですが…、もちろん全て中身があっての話。
ただし、世阿弥の言葉にもあるように
「心より出でて形に入り、形より出でて心に入る」
~形もろくにできない役者は心があったとしても気持ちの空回りとなる~
形とは、能の基本のことではありますが、形を習得しないと心は入りづらい、そして形を追求することで、そこに魂は宿ると世阿弥が「風姿花伝」に残しています。確か武道の空手も型から入りますよね? いざという時のために形から整え、魂を宿らせるためにも「ファッションはあなたの履歴書であり、企画書である」ということを時々思い出して頂けるとうれしく存じます。もちろん、ファッションのご相談やセルフブランディングのご希望があればいつでもご相談下さい。
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