なんでハトがハイヒールに? 妄想工作家が作る新世界乙幡啓子さん

私自身、20代の頃は「“働くこと”と“やりたいこと”の折り合いの付け方」にもんもんとしていましたが、今や妄想工作家として働くことが生きることであり、私自身となっています。自分が好きなことを、自分が納得する形で実現できていると、仕事は自然と楽しくなる。それを若い人にも伝えたいですね。

新作の「ベアリングマ」は、回転を支える軸受け部品「ベアリング」と「クマ」を掛け合わせた作品です。人気漫画『ゴールデンカムイ』に、クマがとった獲物をぶんぶん首で振り回すシーンが強烈に印象に残り、「首が360度回転するクマを作ってみよう」という着想につながりました。2月の展示会に13点ほど出品したのですが即完売となり、可能性を感じています。

首が360度回転するベアリングマを制作する乙幡さん

最近は、若くして起業で成功する人やインフルエンサーの活躍も目立ちますが、インターネットの先にいる何百万人よりも、半径数メートル内にいる身近な人から「面白いね」「よかったよ」と喜んでもらえる仕事を目指すほうが、長続きするのではないかと思います。続けるには、自分自身が無理せずに楽しんでいることが何より大事ですから。

私がこの仕事をしていて一番喜びを感じるのも、「うちの子が妄想工作をまねて作ってみました!」と写真が送られてきたりと、楽しんでもらえている様子がダイレクトに伝わった時。展示会に足を運んでくれるお客さんもしかり、顔の見える関係で受け取れる反応を大切にして、「あの人が楽しんでくれるのは、こういう作品かな?」とアイデアを練るのは楽しいし、結果的にいい仕事につながるのかなと思います。

20代の頃、私は必死に自分にとっての“天職”を探していましたが、今でも「天職をつかめた」という感覚はありません。数年後には映像を作ったり、絵本を作ったり、また新しいことをやってみたいなと、妄想が膨らみ続けるからです。天職探しの答えが見つからなくても、妄想を続けていたら人生はずっと楽しめるのかもしれないですね。

■乙幡啓子さんのキャリアヒストリー
22歳(1992年)津田塾大学国際関係学部卒業後、通信系の会社に就職。10カ月で退職し、マーケティングリサーチ会社に再就職し、7年勤める
30歳(2000年)会社を辞めて、ナレーター塾に1年通う。卒業後、ナレーターを目指すも芽が出ず、派遣で数社働いた後、フリーペーパー出版社でライター業を始める
33歳(2003年)「デイリーポータルZ」で記事執筆を開始。ネタ切れ解消のために書いた工作系記事が好評だったのを機に「妄想工作家」の道に
41歳(2011年)雑貨作品「ホッケース」がヒット。雑貨企画・工作プロジェクト「妄想工作所」を立ち上げる
45歳(2015年)第2回雑貨大賞受賞。現在、月2~3回ペースで新作をリリースする

(ライター 宮本恵理子)

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