検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

談志いわく「銭湯は裏切らない」 思い出の豊かな時間

立川談笑

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

思うところあって、銭湯の話をしてみますね。思い入れは深いんだけど、語る資格がない気もして実はちょっと後ろめたいのですよ。というのも、いまは銭湯に通ってないから。昔はずいぶん通ったもんなのにねえ。

ええ、そもそも私自身は東京の下町の生まれで、暮らしていた木造アパートはトイレ・炊事場は共同で、もちろん風呂なしの銭湯通い。

「赤ん坊の頃、湯船につけてやると気持ちよくなっちゃって。ぷりぷりぷりってうんちが出ちゃうんだ。そいつを周りに気づかれないように手ですくって……」。「子別れ~昭和篇」(古典落語「子別れ」を、昭和の話として作り直した私のオリジナル作品)でのこのセリフは、私の実体験です。もちろん、ぷりぷりしちゃう立場としての、実体験。わはは。あんまり、威張れたもんじゃあない。

そんな私も今や風呂付きのマンションに住まいしておりますよ。ちょいとひねるとシャワーからいくらでもお湯が出てくる。あれは、何をひねってるんだ? 蛇口じゃないね。水栓とか言うのかな。いや、ここはどうでもいいか。

昭和から平成に入って銭湯は次々となくなったのは、皆さんご存じの通り。そんなご時世でも、地域に愛されて持ちこたえている銭湯、あるいは新しく魅力を打ち出すことに成功した銭湯など、いろいろとあるでしょう。ただ少なくとも、我々日本人全体の生活そのものがかつてと大きく変わって、銭湯の意味合いが変わったのは間違いない。あー、この先ぐちゃぐちゃと理屈をこねたくなるけど、今回はヤメ! ただひたすら散漫な思い出話に終始することにします。

あの取材をしたのはもう十数年も前のことか。おぼろげな記憶をたどりつつの話です。銭湯の壁に絵を描く仕事に密着したことがあります。都営住宅から軽トラで朝早くに出発して。作業はひとり。明るく静まりかえった銭湯の光景が、新鮮でした。養生を施して、ペンキを塗る、乾かす、こっちを塗る、乾かす。職人の日常がたんたんと過ぎていきます。

師匠・談志の背中を流す

そして途中の休憩時間が楽しかった。まだ浅い夏の、明るい脱衣場でね。撮影スタッフもみんなあっちでゴロン、こっちでゴロンと床に寝ころんでる。天井の大きな扇風機プロペラが穏やかに回っているところに、救急車のサイレンが遠くに聞こえたり聞こえなかったり。あれは私の人生の中でベストいくつかに入る、豊かな時間でしたねえ。

師匠談志も銭湯が好きでした。色紙によく書いていた「銭湯は裏切らない」とは、どんな時にも間違いなく快適さを提供してくれる場所、という意味。前座の頃、銭湯にお供をしたものです。「男湯」の暖簾(のれん)を跳ね上げて入ると、番台では師匠が湯銭をまとめて払ってくれます。湯銭とは入浴料のこと。あれが妙に照れ臭いというか、不思議な感じがしました。やけに子ども扱いされているような。

「しっかり掛け湯をしてから湯船に入れー」。ハイ! そこは銭湯育ちなのでダイジョブです。私の落語「堀の内」にある銭湯のシーンには「立川談志に叱られるぞ」なんてフレーズを大事に入れています。

背中を流す作法は談志に教わりましたね。「背中を流す」ってのは、目上の人の背中を洗うことです。こないだ若いのと話をしていたらこの言葉を知らなかったんで、驚いちゃった。

「お背中を流しましょうか」と一声かけて、「おお、すまないね。頼むよ」ってなやりとりがあってから、背中をごしごしする。で、背中の泡をお湯でザーッ、ザーッと流す。ここまで。おわかりでしょうか。「お背中を……」と声をかけたときには、あとで流すためのお湯を桶(おけ)に2杯ほど用意してあるのです。これが私が教わった流儀。

そんな、談志が通っていた南大泉の銭湯もなくなっちゃった。同じく上野の根津権現のすぐそばにあった銭湯も、もうない。どんどんなくなるんだ。今年の大河ドラマ「いだてん」にも登場する昭和の名人、古今亭志ん生師匠が生前通ったのが、日暮里の世界湯。ここもなくなっちゃった。9年前閉店ですって。ちっとも知らなかった。

銭湯がひしめいていた昭和40年代

私が育った昭和40年代。東京の江東区北砂に銭湯はひしめいてました。今日はどこに行こうかってなもんで。小学校の裏手のオリンピック湯にはサウナがあった。砂町銀座という商店街にあって、通ったのが桜湯。逆にまったく行かなかったのが銀座湯。銀座湯はお湯が真っ黒で、私らガキの間では「ホラ、昼間。脱衣場で書道教室をやってんだろ。そのあとの筆だとか硯(すずり)を湯船で洗ってんだって。だからお湯が黒いんだよ」、なーんて噂が立ってました。温泉だから黒いんだよ! ったく、バカだな!

近くて一番頻繁に通ったのが亀の湯。こちらはいまも健在です。数年前に雑誌の取材で立ち寄ったら、ほぼ昔のまんまでした。今はやりのフロント式ではなくて、番台。営業前の時間だったので、番台に座らせてもらっちゃった。古典落語「湯屋番」にも登場する、「あこがれの~、ばん~だ~い~」。女湯を見下ろすと、誰もいない洗い場に何やら手すりのような謎のつかまり棒がある。聞けば、「近頃はお年寄りのお客さんが多いから……」と。うーむ、甘い妄想は裏切られるなあ。

立川談笑
1965年、東京都江東区で生まれる。高校時代は柔道で体を鍛え、早大法学部時代は六法全書で知識を蓄える。93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名、05年に真打ち昇進。近年は談志門下の四天王の一人に数えられる。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評があり、十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。

これまでの記事は、立川談笑、らくご「虎の穴」からご覧ください。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
画面例: 日経電子版 紙面ビューアのハイライト機能
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_