世代超えて広がるゲーミングPC 対戦も交流も魅力
ゲーミングPC最前線/人気ブランド「ALIENWARE」責任者に聞く
日本でも人気を高めているゲーミングPC。中でもゲーマーたちの人気を集めているブランドが「ALIENWARE(エイリアンウエア)」だ。1996年に設立され、現在はデルのプレミアムゲーミングパソコンブランドとして高性能なゲーミングPCを発売している。同社のバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーを務めるフランク・エイゾール氏にゲーミングPCが人気の理由、そしてゲーミングPCを生かしたeスポーツの可能性について話を聞いた。
ネットがゲームファンをつなげた
――最近、日本でもパソコンをプラットフォームにしたゲームを楽しむ人が増えています。パソコンゲームが世界的に流行している理由は?
昔からゲームファンやSFファンはいました。でも、仲間を見つけるのはむずかしかったんです。インターネットがそういう人たちをつなげたことで、コミュニティーができ、イベントが生まれました。数十人という単位から始まったイベントも、今では「東京ゲームショウ」や(ゲーム展示会の)「E3」のように数万人が参加する規模に成長しています。その影響力に企業も注目し、参入するようになりました。
そういう意味で、パソコンゲーム市場がここまで大きくなった理由は、やはりインターネットにあると思います。
パソコンは他のゲーム機と比べると多くのコンテンツがあるので、パソコンから他のゲーム機に影響が広がることが多いんです。eスポーツや無料MMORPG(MMORPGはMassively Multiplayer Online Role-Playing Gameの略。オンラインを通じて複数のユーザーが同じ世界で遊べるロールプレイングゲームのこと)、アーリーアクセス(正式リリース前にゲームを遊べる方式。ユーザーはいち早くゲームが楽しめ、開発者はそこから得た資金を開発に回すことができる)など、多くのイノベーションがパソコンから生まれました。
ユーザーにとっては「遊びたいゲーム機」よりも先に「遊びたいゲーム」があるんです。そのゲームを遊ぶために必要なゲーム機を選ぶことになる。そういう意味で、コンテンツの多いパソコンはゲームにとって重要なプラットフォームだと思います。
もう一つ、ゲームプラットフォームとしてのパソコンの長所は、勉強や仕事のために買ったパソコンでもゲームができるという点です。仕事がメインでたまにゲームをする程度だった人が、気づいたらゲーマーになり、今度はゲームが快適にできて仕事もできるパソコンがほしくなる。そんなプライオリティー(優先順位)の逆転が起きるのもパソコンならではでしょう。
需要が増えユーザー層が広がる
――ALIENWAREの購入者はどんな人たちですか?
設立当時のユーザーは20代後半から30代後半の男性がほとんどでした。当時のパソコンはとても高かったので、それを買えるのがこのユーザー層だったんです。
でも最近は需要が増えていると実感しています。
親が子どもに進学などのタイミングで買い与えたり、女性もゲーミングPCに興味を示したり。時間に余裕がある引退した世代が孫と一緒にオンラインゲームで遊んでいるという話も耳にします。オンラインゲームなら同じ地域に住んでいなくても会話ができます。ゲームがコミュニケーションツールとして使われているわけです。
パソコンに対するイメージも変わってきていると思います。昔はパソコンというとやぼったいイメージがあった。でも最近はテクノロジーの進化でかっこいいパソコンが増えた。多くの人の中で「自慢したい/見せたい」モノになってきたんです。
上の世代にとってパソコンは後からできたモノで、使い方を学ばなければいけなかった。でも今の若い世代は生まれたときからパソコンがあって、テクノロジーに触れながら成長してきた。もう生活の一部になっている。パソコンに対する感覚も違うと思います。
――設立当初、この成功を予想していましたか。
とんでもない。あの頃の私たちの想像をはるかに超えています。当時の目標は1カ月に50台だったんですから(笑)。
私は学生時代、オタクだったんですが、ゲームの話で盛り上がれる友人は4人しかいませんでした。でも、今は「リーグ・オブ・レジェンド」を遊んでいる人が世界中に何万人もいて、その人たちは「リーグ・オブ・レジェンド」の話題で盛り上がれる友人でもあります。そんな状況をつくるのに貢献してこられたことは、私にとって大きな誇りです。
eスポーツなら年齢や体格も関係ない
――オンラインゲームが発展して生まれたeスポーツについてどう見ていますか?
eスポーツの影響力は大きいと思います。eスポーツは世界の人たちをつなげることができるんです。
従来のスポーツ大会では、参加するために同じ時間に同じ場所へ行かなくてはいけませんでした。でもeスポーツなら世界中のどこにいてもオンラインでつながることができます。天気の心配をする必要もないし、プレーヤーの年齢や体格も関係ありません。
その魅力が今までは理解されていなかったのですが、徐々に状況は変わりつつあると感じています。
企業も注目し始めています。米国では野球やバスケットボール、サッカーチームのオーナー企業もeスポーツの影響力や盛り上がりに興味を持っている。最近では脅威も感じていると聞きました。理由は従来のスポーツは、eスポーツほど、若い世代を取り入れていないからです。その結果、eスポーツに投資するスポーツチームも増えています。
eスポーツは次世代のスポーツプラットフォームです。私が生きている間には五輪競技になると思います。
──五輪が行われるのは4年に一度。採用されたゲームが次の五輪にはなくなっているのではという危機感もあるようですが(記事「『人気ゲームは5年後も残る?』 五輪eスポーツに壁」参照)。
とても成功しているeスポーツゲームでは、5年以上人気のタイトルもありますよ。「カウンターストライク」は10年以上続いているタイトルですし、「リーグ・オブ・レジェンド」も登場から10年たちましたが、今でも人気です。
五輪入りをするためにはゲームのジャンルを考えるべきだとは思います。サッカーのように、従来のスポーツでもeスポーツでも楽しめるジャンルですね。
レーシング系のゲームも長年人気のタイトルが多いジャンルですね。クルマでサッカーをする「ロケットリーグ」というゲームは5年たってもなお人気があります。実際のレースをするとなると、サーキットも車両も必要になると思いますが、eスポーツならインフラ投資の必要はありません。IOC(国際オリンピック委員会)がこれからゲームについて学ぶべきことは多いと思いますよ。
(文 辻村美奈=マイカ、写真 吉村永)
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