事故はオフィスで起きている 労災をどう防ぐ産業医・精神科専門医 植田尚樹氏

しかし、働く人の安全・安心を守ることは会社の義務であり、高いモチベーションを維持するためにも不可欠なことです。工場での取り組みを参考にすることは有効だと思われます。

例えば、工場では事故に関する情報共有を徹底します。そもそも一定数の従業員がいる企業では、衛生委員会や安全委員会(2つ合わせて安全衛生委員会でも可)を設置し、月に1回は会議を開く必要があります。事故が起きれば速やかに安全委員会などに報告し、原因や再発防止策を議論し、決まったことを周知徹底することが求められます。

また、衛生委員会などは産業医が参加することが望ましいとされています。医療分野の専門家としての立場のほか、工場などでは「素人」の目線からリスクを指摘することもあります。委員会の設置義務はサービス産業でも同様ですが、うまく活用できていない場合が多いようです。

労災事故の8~9割は不注意

工場では安全意識の向上にも工夫をこらしています。事故が起きた場所には必ずといってよいほど、張り紙などをします。最近は外国人労働者も増えており、英語など複数の言語で表示する企業も増えています。

ある工場では事故をきっかけに、安全や衛生を象徴する緑十字の旗に、工場の全従業員が署名して掲示するようにしました。二度と事故を起こさないという決意表明で、昔でいう血判状のようなものですね。これだけが理由ではないと思いますが、無事故の日が1年半近く続いているそうです。月に1回、安全に関する標語を募集して優秀作を張り出すところもあります。

労災事故の8~9割は個人の不注意といわれます。特に最近は臨時社員や派遣社員の労災が多く、マニュアルをきちんと理解していないことが原因のようです。組織として防止対策を徹底すれば防げる事故も多いはずです。改めて周りを見渡してみて、リスクを確認してはどうでしょうか。

※紹介したケースは個人が特定できないよう、一部を変更しています。

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植田尚樹
1989年日本大学医学部卒、同精神科入局。96年同大大学院にて博士号取得(精神医学)。2001年茗荷谷駅前医院開業。06年駿河台日大病院・日大医学部精神科兼任講師。11年お茶の水女子大学非常勤講師。12年植田産業医労働衛生コンサルタント事務所開設。15年みんなの健康管理室合同会社代表社員。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

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