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『草々不一』を書いた朝井まかてさん 写真/洞澤佐智子

『草々不一』を書いた朝井まかてさん 写真/洞澤佐智子

ビジネスから離れた時間を、より愉しく豊かに過ごすための情報誌「日経おとなのOFF」から、新作を書いた作家にその作品の読みどころを聞き、合わせてよく読む本や最近読んだ本2冊についてコメントしてもらうミニコラムを転載します。今回は『草々不一』の朝井まかてさんです。

◇  ◇  ◇

書いた本
『草々不一(そうそうふいつ)』(講談社)
字の読めない夫に妻が手紙を残す表題作のほか、兄の死の真相を知った浪人が仇(あだ)討ちを決意する『紛者』、青年剣士を慕う武士の娘の心情をつづる『春天』、名家から婿養子にと請われた武家の三男坊が、裏があるのではと疑う『蓬莱』など、武家の人生の諸相を表した全8編を収録。

他藩の動向を隠密のごとく探る聞番(ききばん)、刀でなく包丁を手に江戸城内の料理場で働く台所人など、登場するのは「武芸に励み、戦(いくさ)に備える」という武士像とはかけ離れた江戸の侍たち。江戸庶民の暮らしを活写した初の短編集『福袋』の刊行から1年、本書はそれと対をなす、「武家の人生」をつづった短編集だ。

時は江戸時代中~後期。当時は武士という働き手に見合うだけの職場がなく、1つの役職を数人で受け持つため、勤務時間は1日数時間という者も少なくなかった。「すると彼らにも喜んだり、悩んだりする心の余裕が出てくる。そうした感情の揺れが生む、さまざまな人生模様を描きたかった」

上司の嫌がらせに耐え、秘密の副業に励み、親の死を隠して禄を不正に受け取る。描かれる武士たちの姿は実に人間臭く、はっとするほど現代的だ。だが、今日的なテーマを意図して選んだわけではなく、「面白いと感じるままを書いただけ」と言う。「人の業や性は時を経てもそう変わらない。彼らを身近に感じるのは、私たち自身が今も"江戸時代のシッポ"を残したまま生きているからでしょう」

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