エンタメ!

エンタウオッチング

あのヒットCMも 中島信也氏が振り返る、平成の広告

日経エンタテインメント!

2019/4/21

平成初期にデジタル技術を武器に躍進した中島氏。しかし中期からは「伊右衛門」「日清ラ王」のように、役者の芝居で見せていく「ドラマCM」でも活躍をする。

「ある時、大貫卓也さんに薦められて、韓国ドラマの『冬のソナタ』を見たんですよ。そうしたら面白くて(笑)。ポップでキッチュなCMばかり作ってきた僕は、そこで初めて知るんです。『役者さんって、人の心を動かすんだな』と(笑)。そんな時に来たのが、伊右衛門の仕事でした。企画をしていた永見浩之さん(代表作・ワイモバイル)が『夫婦の気持ちを描きたい』と言うので本木雅弘さんと宮沢りえさんに演じてもらったら、素晴らしい演技をするんですよね。その後、ドコモのCMをやった時も、渡辺謙さんがいい感じでお芝居をしてくれて、楽だし(笑)、面白くてしょうがない。これは監督冥利に尽きると思って、ドラマチックなCMにも挑戦してきたんです」

■CMでテレビを盛り上げる

CMで俳優演出の醍醐味に触れ、映画監督や演出家になるディレクターも多い。しかし中島氏は、一貫してCMの最前線を走り続けた。

「僕はやっぱり、コマーシャルが好きなんですよね。例えば『燃焼系アミノ式』なんて、理屈じゃなく、歌と映像で記憶に残るじゃないですか。佐藤雅彦さんの『ポリンキー』や『バザールでござーる』もそう。ドラマ性のあるCMも好きだけど、15秒に凝縮された、CMならではのエンタテインメントも大好きなんです。それに、15秒にピシッとまとめるのは実はすごく難しくて、1つの芸やと思うんですよ。15秒芸。そういう職人芸に裏打ちされたCMがズラリと並べば、『テレビも捨てたもんじゃない』と思われて、メディアとしてのテレビの価値も上がるはず。面白い番組をこれだけ無料で見られるテレビは、日本の宝だと思うんですよね。広告が痩せると、番組も痩せる。CMもまだまだがんばらないと」

入社以来、東北新社に籍を起き、現在は取締役も務める。売れればフリーになる人も多いなか、なぜ会社員であり続けたのか。また還暦を超えた今、自身の「定年」は?

「僕はデジタルと巡りあえて、佐藤雅彦、大貫卓也といった平成の天才たちの頭の中を映像化してきました。これはプロダクションにいて、CGデザイナーやエンジニアとチームを組んでいたからできたことなんです。会社を辞めなかったのは、僕1人で外に出たところで、翼をもがれるような感じがしていたからじゃないかな。

そしてここまでいるとね、さすがに会社での責任も重くなる。これからも面白い映像を生める会社であり続けてほしいので、新しい才能を育てないといけない。

実際、会社には僕なんかより才能がある若いヤツがいます。ただ、彼らは生まれた時からパソコンがあって映像を1人で作れる世代なので、人とお話をしないんですよ。難しい役者さんを乗せたり、いろんな注文を出す広告主さんをさばいていくには、やっぱり俺ぐらい、しゃべりに迫力がないとね。

今は『コイツがいるから大丈夫』ってヤツが登場するまで死ねんなと思うてます。だからいつまで続けるかと聞かれたら…俺二世が出るまで。カッコ良すぎる? こんな発言、絶対炎上するわ(笑)」

(ライター 泊貴洋)

[日経エンタテインメント! 2019年4月号の記事を再構成

エンタメ! 新着記事

ALL CHANNEL