――石津さんが着ているブレザーにはストーリーがおありだそうですね。
石津「僕がきょう着ているブレザーは父(石津謙介さん)が81年、古希の祝いに知人からいただいたもの。それを僕が受け継ぎました。40年を経た今も新鮮です。着丈が少々長めですが、最近はそれがトレンドになっているからね。時代に合ってきました。ほかにも古いブレザーを持っています。レンガ色のものは1970年代、ストライプのものは60年代でいずれも日本製。スポーティーで決して古びないでしょう」
「ちなみに合わせているマドラスチェックのネクタイはブルックスブラザーズのもので、ハワイで買いました。マドラス柄のネクタイだけで5~6本持っています。ブルックスブラザーズのレジメンタルのネクタイは、日本の多くの政治家がしていることでも有名だよね」
■五輪で再びブレザーに脚光
――ニューヨークのマディソン街にあるブルックスブラザーズ本店に初めて行かれたのはいつでしたか。
石津「アイビーリーグのキャンパスを取材した写真集『TAKE IVY』の撮影の帰りに立ち寄りました。30歳の時。怖かったよね。若い人なんかほとんどいなくて、気後れする感じでした。感激したのはショーウインドーの飾りでした。実はこの青山本店も思い出深いのです。かつてVANのオフィスがあって私もいましたから。VANが運営していた99ホールという小ホールもあったんだよ」
「このビルは64年の東京五輪の時にできたビルですよね。オリンピック・パラリンピックでは各国の選手はブレザーを着用します。64年の五輪では父もユニホーム開発に携わったと聞いています。また、ブレザーが脚光を浴びるかもしれないね」
(聞き手はMen’s Fashion編集長 松本和佳)
服飾評論家。1935年岡山市生まれ。明治大学文学部中退、桑沢デザイン研究所卒。婦人画報社「メンズクラブ」編集部を経て、60年ヴァンヂャケット入社、主に企画・宣伝部と役員兼務。石津事務所代表として、アパレルブランディングや、衣・食・住に伴う企画ディレクション業務を行う。VAN創業者、石津謙介氏の長男。
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