マネー研究所

お金で考える人生100年の計

年金2割減なら どう考える60代後半からの人生資金

日経マネー

2019/4/19

■「生活費に満足」の背景とは

そこで公的年金だけで生活する人(資産からの引き出しが0%と回答した人)の特徴を見てましょう。平均の年間生活費は308.2万円で全体よりは少し低めですが、生活費が少ないというレベルではありません。先ほどの満足感を覚える生活費水準と比べてみると、ちょうど満足と感じる分岐点辺りです。

イラスト:小迎裕美子

では生活費の水準に彼らは満足しているのでしょうか。「満足」と答えた人の比率は、43.8%と平均を大きく上回っています。ただ、そもそも彼らの現役時代の年収は高い傾向があります。そのため公的年金の受給水準自体が高いのです。すなわち、「年金の水準が高いので、資産からの引き出しの必要がなく、生活の満足度も高い」という姿が浮かんできます。

問題は公的年金が手厚い65~79歳ではなく、我々にとっての公的年金の水準です。14年の年金財政検証では、43年度の状況が明示されています。14年の時点で所得代替率(現役男子の手取り収入に対する標準世帯の夫婦の年金額の比率)は62.7%でした。43年にはこれが51.0%(最も高い水準になるケース)にまで下がります。比率にすると、約19%水準が下がるというわけです。

もちろん、その年に一気に下がるということではなく、毎年徐々に下がります。ただ厚労省としては、43年には現役世代の手取りを考慮した実質的な年金額が大まかに2割減になるという想定を立てていることになります。

■資産引き出しはやはり必要

現在の20~30代にとってはこの水準での年金額、すなわち少なくとも2割減くらいの年金額を想定する必要がありますが、我々50~60代ではどうでしょう。すぐに大幅減になると心配する必要はないでしょうが、それでも43年は現在60歳の人が84歳になる時点です。かなり微妙な年齢ですよね。

ところで、公的年金が2割減少すると想定すると、単純に計算すれば現在の年間生活費308.2万円(公的年金だけで生活していると回答した人の平均生活費)が、246万円くらいまで低下する計算になります。この水準の満足度を見ると、「かなり厳しい生活なので何とかしたい」と感じる水準(263.5万円)を下回っており、普通に生活するには厳しい水準と言えます。

ちなみに、生活費の補填のための資産からの引き出し割合は、1~3割が35.0%と最も多い層となりました。我々の覚悟としてはやはり、将来、このレベルでの資産の引き出しが必要になる可能性が高くなると考えておくべきではないでしょうか。

野尻哲史
フィデリティ退職・投資教育研究所所長。一橋大学卒業後、内外の証券会社調査部を経て2006年にフィデリティ投信入社、07年から現職。アンケート結果を基にした資産形成に関する著書や講演多数。

[日経マネー2019年5月号の記事を再構成]

これまでの「お金で考える人生100年の計」の記事はこちらからご覧ください。

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