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副業容認の企業、まだ3割 長時間労働や割増賃金が壁 弁護士 志賀剛一

2019/4/11

これを前提にすると、例えば甲社のA工場で本業として8時間勤務した後に、副業として乙社のB事務所で勤務する場合、1日の労働時間は8時間以内、1週間の労働時間の合計を40時間というのが労基法で定める法定労働時間ですから、乙社のB事務所での副業勤務がすべて法定外労働時間となり、割増賃金(時間外手当は2割5分以上5割以下)の支給対象となります。

■副業労働時間の「通算」には批判も

労働時間を通算した結果、法定労働時間を超えた場合、時間外手当の支払い義務が発生するのは多くの場合、副業先の会社です。また、甲社と乙社での通算の労働時間は週40時間を超えることになるので、乙社において労働基準法36条1項(いわゆる三六協定)の規定に基づき時間外労働についての法定の手続きが必要です。副業者を雇い入れようとすると、割増賃金を支払わなければならないうえ、こんなに面倒臭いことになってしまうわけです。

さらに、本業の会社についても負担が増えます。会社には安全配慮義務があるので長時間労働を規制する責任があり、副業先の会社での労働時間まで把握する必要があります。そのために事務量が肥大化し、人事労務担当者が長時間労働から抜けられないのでは本末転倒になります。

仄聞(そくぶん)するところでは、副業先で割増手当まで払われている例はあまりないようで、このあたりはグレーゾーンとして実務運用がなされているように感じます。

事業主を異にする場合にも労働時間を通算する1948年の通達は学説上の批判も強いところで、早急に見直されるべきであると考えています。厚労省も、2018年7月から「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」を開催し、再検討に入っているようです。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。

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